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44.王子と精神世界で
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目の前に居る王子は微笑みを絶やす事なく俺の方を見ている。
今、なんつった?にこやかな顔で、なんつった?
え?愛と再開させてくれてありがとうございます?いや……何で幽霊の姿で呼んだ!?え、てか呼んだって言ったよな今!?
「夢だ。夢に違いない」
「いや、確かに精神世界みたいなものである事に間違いはないが……」
脳がオーバーヒートして、意識が失いそうになる。否、正しくは失いたいという願望だ。逃げたい。
しかし、王子は俺を逃がす気は毛頭ないらしい。精神世界って何だよ!
「少し準備に時間がかかってね……やっと君と話せる。君には全部話さなきゃいけない」
「…………」
聞きたいが、呼び寄せたと言われた手前、嫌な感じもする。しかも準備って何だ。
警戒している俺を見て、王子は少し溜息をつくと、手を上にあげた。それに呼応するかのように周囲の風景が草原になり、池までも現れた。
王子がどうぞ、と言った所には机とテーブルもあり、お茶やお菓子もある。
「身体はないけど、少しでもリラックス出来るように」
そんな事を言われれば、座らないわけにもいかない……。
渋々座り、目の前にあるお茶へと手をつける。うん、味は分からないが少し気分は落ち着く。
「……君には助けてほしかったんだ……国を」
「……は?」
いきなりスケールが大きい事を言われ、手に持とうとしたクッキーをポトリと落とした。
何言ってんだ、この王子様。一端の幽霊に言う言葉か?てか幽霊に何を求めてるんだ。というか、国を救って欲しいなら幽霊を呼び寄せてはいけないだろ。
「うーん……一応、君の精神世界に干渉してるから、君の考えてる事は僕にも伝わるんだけど……」
「……不敬があっても処刑される身体がない」
「……まぁ、不敬を言うつもりもないけれど……」
いっそ開き直ってみるが、その冗談は笑えないとでも言うように、王子は少し口角を引きつらせていた。実際、俺の身体は向こうの世界だ。ある意味、幽体ってのは無敵だなー……。望んでなったわけではないし、幽体のままで居たいかと言われれば確実にお断り案件ではある。
それにしても……王子ってヒロイン側だろ?アニスに攻略されてるんだよな?アイが言うには、学園に入ってから嫌われていったとか。
「……まず、最初から話始めようか」
俺の考えを読んだ王子様は、寂しそうに微笑んだ。
アニス側ならお断りだ!俺はアイの味方だ!と心の中で伝えるも、それに対しては優しく微笑みながら王子は紅茶に口をつけると話始めた。
「初めてアデライトと会った時、彼女は俺を見て泣き喚いた後……倒れたんだ」
今、なんつった?にこやかな顔で、なんつった?
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しかし、王子は俺を逃がす気は毛頭ないらしい。精神世界って何だよ!
「少し準備に時間がかかってね……やっと君と話せる。君には全部話さなきゃいけない」
「…………」
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渋々座り、目の前にあるお茶へと手をつける。うん、味は分からないが少し気分は落ち着く。
「……君には助けてほしかったんだ……国を」
「……は?」
いきなりスケールが大きい事を言われ、手に持とうとしたクッキーをポトリと落とした。
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「うーん……一応、君の精神世界に干渉してるから、君の考えてる事は僕にも伝わるんだけど……」
「……不敬があっても処刑される身体がない」
「……まぁ、不敬を言うつもりもないけれど……」
いっそ開き直ってみるが、その冗談は笑えないとでも言うように、王子は少し口角を引きつらせていた。実際、俺の身体は向こうの世界だ。ある意味、幽体ってのは無敵だなー……。望んでなったわけではないし、幽体のままで居たいかと言われれば確実にお断り案件ではある。
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