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42.後悔のないように
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「……幽霊は夢を見るのだろうか」
身体に戻った感覚があった。それは確証があるわけでもなく、ただ幻だったような夢現ではある。
その事をアイが思い出したのか、少し俯いた。
「……もし戻れたとしたら喜ばしい事だけれど……寂しい」
ここに1人アイを置いて行く事は、俺としても心穏やかではない。戻ったとしても、心配で仕方がないだろう。むしろもう一度ここへ戻る方法はないのかと考えそうだ……考えてどうにかなるものではない事を理解していたとしても。
――たとえ、生きていても、いつ死ぬかなんて分からない。
だからこそ、いつ別れが訪れるのかなんて分からないのだ。
後悔のない生き方を。なんてよく聞くけれど、どう生きれば良いのかなんて分からない。というかむしろもう死んでいるわけだが……。
「アイが生きていけるように協力するから」
「……それよりも……少しでも一緒に居たい」
孤独の中、再会出来た喜びと安堵。しかし、それに甘んじて楽しんでいても、アデライトの現状は悪いのだ。立場も、家も。
まぁ……ブルーノとルネに至っては、かなり周囲への印象が悪かったから、どうかは分からないが。
結局、自分の為にというか、俺が後悔せずにいる為、今の俺がアイに出来る事は何か。日本ではない分、特に自分の欲望もなければ、自分の為に何かしたいわけでもない。……だからこそ、アイの今後を考えながら、いつの間にか泣き疲れて眠ったアイを見ているうちに、自分も睡魔のような微睡みの中に沈んでいった。
「……まっ!斗真!斗真ー!!」
「……ん」
俺を呼ぶ声に意識が浮上する。
「あ。居た」
アイの声がする方へ視線を向ければ、目に涙を浮かべたアイが居た。
……寝て消えていたのか……流石に昨日の今日じゃ心配するよなぁ。
アイは俺を見つけて落ち着いたのか、涙を拭えば、よし!とその場で姿勢を正した……のだが。その恰好は先ほどのアイには似つかわしくない、とても動きやすい、いつも鍛錬に使っている服装だ。
「えと……?」
「いつでもアニス達を捕まえられるように準備は毎日行っておくべきでしょう!?」
「前世引きこもりオタがー!!」
そう、愛だって俺と同じでゲームばかりしていて、家にこもりっきりだったのだ。違う所と言えば、愛はそれなりに勉強もしていた事くらいだ。……学業も家に籠ってるようなもんじゃね?それなのに、アイになったらこれか!
「斗真も引きずられてないで、走るよー!」
「無理!無理だからー!」
そんな俺の声は無視され、いつもと同じように鍛錬に挑むアイ……そして、引きずられる俺だった。
身体に戻った感覚があった。それは確証があるわけでもなく、ただ幻だったような夢現ではある。
その事をアイが思い出したのか、少し俯いた。
「……もし戻れたとしたら喜ばしい事だけれど……寂しい」
ここに1人アイを置いて行く事は、俺としても心穏やかではない。戻ったとしても、心配で仕方がないだろう。むしろもう一度ここへ戻る方法はないのかと考えそうだ……考えてどうにかなるものではない事を理解していたとしても。
――たとえ、生きていても、いつ死ぬかなんて分からない。
だからこそ、いつ別れが訪れるのかなんて分からないのだ。
後悔のない生き方を。なんてよく聞くけれど、どう生きれば良いのかなんて分からない。というかむしろもう死んでいるわけだが……。
「アイが生きていけるように協力するから」
「……それよりも……少しでも一緒に居たい」
孤独の中、再会出来た喜びと安堵。しかし、それに甘んじて楽しんでいても、アデライトの現状は悪いのだ。立場も、家も。
まぁ……ブルーノとルネに至っては、かなり周囲への印象が悪かったから、どうかは分からないが。
結局、自分の為にというか、俺が後悔せずにいる為、今の俺がアイに出来る事は何か。日本ではない分、特に自分の欲望もなければ、自分の為に何かしたいわけでもない。……だからこそ、アイの今後を考えながら、いつの間にか泣き疲れて眠ったアイを見ているうちに、自分も睡魔のような微睡みの中に沈んでいった。
「……まっ!斗真!斗真ー!!」
「……ん」
俺を呼ぶ声に意識が浮上する。
「あ。居た」
アイの声がする方へ視線を向ければ、目に涙を浮かべたアイが居た。
……寝て消えていたのか……流石に昨日の今日じゃ心配するよなぁ。
アイは俺を見つけて落ち着いたのか、涙を拭えば、よし!とその場で姿勢を正した……のだが。その恰好は先ほどのアイには似つかわしくない、とても動きやすい、いつも鍛錬に使っている服装だ。
「えと……?」
「いつでもアニス達を捕まえられるように準備は毎日行っておくべきでしょう!?」
「前世引きこもりオタがー!!」
そう、愛だって俺と同じでゲームばかりしていて、家にこもりっきりだったのだ。違う所と言えば、愛はそれなりに勉強もしていた事くらいだ。……学業も家に籠ってるようなもんじゃね?それなのに、アイになったらこれか!
「斗真も引きずられてないで、走るよー!」
「無理!無理だからー!」
そんな俺の声は無視され、いつもと同じように鍛錬に挑むアイ……そして、引きずられる俺だった。
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