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どうしたら良いのかなんて分からない。
自分は、ただの幽霊で、そして無力だ。
助けてくれ。
助けてくれ!
助けてくれ!!
――……。
俺の声に答えるよう、どこかから声が聞こえたように感じた。
どこかで聞いた事のあるような……どこかで感じた事があるような……。
ふと既視感を覚えていた時、フッと一瞬意識が飛んだように感じた。……幽霊なのに。
「――っ!……!!」
「………!……………!!」
いきなり周囲が暗闇に呑まれ、周囲は叫び声に満ちた。……うるさい。誰だ。
しかし周囲は未だ闇に呑まれたままで、その顔を見る事すら出来ない。何故だと思えば、瞼が開いていない事に気が付く。
……変だ。
身体が動かない。瞼が開かない。声が……出ない?
身体があるような感覚。不思議に思えど、先ほどの事を思い出せば怒りに震える。
「あ゛……」
何とか掠れたような声でも出る。……自分の声ではないようだが。
俺の声に周囲は更に騒々しくなるが、とりあえず今は……。
「……日に………で…………茉莉花……艶」
アイテム名を口にした瞬間、ピタリと騒動が止まった。
何とか日付と場所を言えた俺の意識は、また沈んでいく。
……誰でも良い……誰でも良いから、あいつらを捕まえてくれ。
これ以上、お嬢様が傷つかないように、傷つけられないように……。
「斗真君!」
ふと目が覚めると、見覚えのある天井に、聞き覚えのある声。
声の方向へ視線を向けると、ベッドに居るお嬢様と視線が合う。
「お嬢さ……」
「どこ行ってたの!?」
ポロリと涙を流したお嬢様に、こちらが焦る。
いや……何か……ん?夢だったのか?
結局、今の自分は今までと同じ幽体で、フワフワと浮かんでいる。
とりあえず考えても仕方がないと思い、お嬢様の側に行く。
太陽の光が窓から入ってきているのに、ベッドで休んでいるのは、まだ体調が思わしくないのか……思い出せば腹立たしい感情が沸き上がってくる。
「良かった……目が覚めたら居ないんだもの……」
常に一緒に居るのが当たり前になっていたのは同じなのか。俺もアニスの元に居た時は変に孤独感に襲われていたなぁと、その時の感情を思い出す。
「お嬢様こそ、無事で良かった……」
あのまま目が覚めなかったら……そんな事までも思っていた自分に今更ながら気が付く。
王子は未だ昏睡状態なのだ。お嬢様がそうなっていてもおかしくないわけで、時間がたって冷静になった頭でも、考えれば考える程、あいつらのした事は絶対に許してはならない事に思える。
自分は、ただの幽霊で、そして無力だ。
助けてくれ。
助けてくれ!
助けてくれ!!
――……。
俺の声に答えるよう、どこかから声が聞こえたように感じた。
どこかで聞いた事のあるような……どこかで感じた事があるような……。
ふと既視感を覚えていた時、フッと一瞬意識が飛んだように感じた。……幽霊なのに。
「――っ!……!!」
「………!……………!!」
いきなり周囲が暗闇に呑まれ、周囲は叫び声に満ちた。……うるさい。誰だ。
しかし周囲は未だ闇に呑まれたままで、その顔を見る事すら出来ない。何故だと思えば、瞼が開いていない事に気が付く。
……変だ。
身体が動かない。瞼が開かない。声が……出ない?
身体があるような感覚。不思議に思えど、先ほどの事を思い出せば怒りに震える。
「あ゛……」
何とか掠れたような声でも出る。……自分の声ではないようだが。
俺の声に周囲は更に騒々しくなるが、とりあえず今は……。
「……日に………で…………茉莉花……艶」
アイテム名を口にした瞬間、ピタリと騒動が止まった。
何とか日付と場所を言えた俺の意識は、また沈んでいく。
……誰でも良い……誰でも良いから、あいつらを捕まえてくれ。
これ以上、お嬢様が傷つかないように、傷つけられないように……。
「斗真君!」
ふと目が覚めると、見覚えのある天井に、聞き覚えのある声。
声の方向へ視線を向けると、ベッドに居るお嬢様と視線が合う。
「お嬢さ……」
「どこ行ってたの!?」
ポロリと涙を流したお嬢様に、こちらが焦る。
いや……何か……ん?夢だったのか?
結局、今の自分は今までと同じ幽体で、フワフワと浮かんでいる。
とりあえず考えても仕方がないと思い、お嬢様の側に行く。
太陽の光が窓から入ってきているのに、ベッドで休んでいるのは、まだ体調が思わしくないのか……思い出せば腹立たしい感情が沸き上がってくる。
「良かった……目が覚めたら居ないんだもの……」
常に一緒に居るのが当たり前になっていたのは同じなのか。俺もアニスの元に居た時は変に孤独感に襲われていたなぁと、その時の感情を思い出す。
「お嬢様こそ、無事で良かった……」
あのまま目が覚めなかったら……そんな事までも思っていた自分に今更ながら気が付く。
王子は未だ昏睡状態なのだ。お嬢様がそうなっていてもおかしくないわけで、時間がたって冷静になった頭でも、考えれば考える程、あいつらのした事は絶対に許してはならない事に思える。
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