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35.結局は悪役令嬢扱い
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遠目から見たら泣いてるアニスの方が被害者とも言えるだろうが、確か貴族は表情を悟らせないのが淑女のマナー。そう思い周囲を見れば、身なりの良い人や女の人からは冷たい視線が返ってきていた。
「私はしていないわ」
堂々と言い放つお嬢様。ここで言葉を濁したら更に冤罪を吹っ掛けられるだろう。
しかし、お嬢様の言葉を聞いた周囲はザワついた。ならばどうして噂が……とか、殿下はアニス嬢を愛していたから……等、陰口だろうが声が大きくて聞こえている。日本の諺で言う、火のない所に煙は立たないと言いたいのだろう。
「何をしている!?」
「アニス、大丈夫か?」
やってきたのは……俺の中では名前呼びで良いか。ブルーノとルネで、ブルーノは泣いているアニスに寄り添い、ルネはお嬢様に対して冷たい目線で、今にも剣に手をかけようとしている感じだ。……騎士道って、女に対して、そう簡単に剣を抜くものなのか?
漫画の世界とはえらい違いだな、なんて思っていると、お嬢様はたじろぐことなく堂々としていた。
……小さくため息を吐いた声が聞こえたのは、俺だけだろう。
「アニスに何をした!?」
「またアニスを虐めたのか!」
男二人が女一人に対し、威圧的に声をかける。うーん……弱いもの虐めかとさえ思える。そして見事な決めつけだ。双方の話を聞くとかないのか。
また、とか言っている辺り、ないんだろうなぁ。最初から全部間近で見聞きしていた俺としては、同じ男である事に対し嫌気が刺す程に、目の前に居る男達はクズだと思う。
「私は何もしていません。しいて言うならば何もしなかった事が罪なのでしょうか。それでは失礼させていただきます」
俺と同じように、話すだけ無駄と思ったのか、お嬢様はそれだけを言うと、相手の返事を待たずして校舎の方へ向かった。
ブルーノの側で泣いていただけのアニスも、やっと此処に来て「そんなっ」とだけ声をあげたが、別に問いかけでもないので返事する必要はないだろう。
「待て!」
「痛っ」
背中を見せて歩くお嬢様に対し、ルネが声をかけると同時に、お嬢様の腕を掴んだ。お嬢様は小さく声を上げて、少し顔を歪ませたが、すぐ毅然とした表情と態度をする。
「女性に対し、そう簡単に手を触れて良いものではないわ」
「お前が逃げるからだろう!」
逃げるも何もない。
むしろ逃げるからと相手が痛みを感じる程につかみ上げるのは体格的にどうなのか。俺みたいにひ弱でヒョロヒョロな体系ならまだしも。
「痛いですわ。お放し下さい」
毅然とした態度でお嬢様は言うも、相手は睨みつけるだけでその手を離そうとしない。
「私はしていないわ」
堂々と言い放つお嬢様。ここで言葉を濁したら更に冤罪を吹っ掛けられるだろう。
しかし、お嬢様の言葉を聞いた周囲はザワついた。ならばどうして噂が……とか、殿下はアニス嬢を愛していたから……等、陰口だろうが声が大きくて聞こえている。日本の諺で言う、火のない所に煙は立たないと言いたいのだろう。
「何をしている!?」
「アニス、大丈夫か?」
やってきたのは……俺の中では名前呼びで良いか。ブルーノとルネで、ブルーノは泣いているアニスに寄り添い、ルネはお嬢様に対して冷たい目線で、今にも剣に手をかけようとしている感じだ。……騎士道って、女に対して、そう簡単に剣を抜くものなのか?
漫画の世界とはえらい違いだな、なんて思っていると、お嬢様はたじろぐことなく堂々としていた。
……小さくため息を吐いた声が聞こえたのは、俺だけだろう。
「アニスに何をした!?」
「またアニスを虐めたのか!」
男二人が女一人に対し、威圧的に声をかける。うーん……弱いもの虐めかとさえ思える。そして見事な決めつけだ。双方の話を聞くとかないのか。
また、とか言っている辺り、ないんだろうなぁ。最初から全部間近で見聞きしていた俺としては、同じ男である事に対し嫌気が刺す程に、目の前に居る男達はクズだと思う。
「私は何もしていません。しいて言うならば何もしなかった事が罪なのでしょうか。それでは失礼させていただきます」
俺と同じように、話すだけ無駄と思ったのか、お嬢様はそれだけを言うと、相手の返事を待たずして校舎の方へ向かった。
ブルーノの側で泣いていただけのアニスも、やっと此処に来て「そんなっ」とだけ声をあげたが、別に問いかけでもないので返事する必要はないだろう。
「待て!」
「痛っ」
背中を見せて歩くお嬢様に対し、ルネが声をかけると同時に、お嬢様の腕を掴んだ。お嬢様は小さく声を上げて、少し顔を歪ませたが、すぐ毅然とした表情と態度をする。
「女性に対し、そう簡単に手を触れて良いものではないわ」
「お前が逃げるからだろう!」
逃げるも何もない。
むしろ逃げるからと相手が痛みを感じる程につかみ上げるのは体格的にどうなのか。俺みたいにひ弱でヒョロヒョロな体系ならまだしも。
「痛いですわ。お放し下さい」
毅然とした態度でお嬢様は言うも、相手は睨みつけるだけでその手を離そうとしない。
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