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28.ヒロインに憑いてみる

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「リア充爆発しろ」

 翌朝、とっとと学園へ向かうお嬢様は、すぐさまヒロインを見つけると、行け!と言わんばかりの目つきで俺を見て来た。
 ……そりゃ命とか家名に関わりますもんね……生活ありますもん……。俺だって両親居なくなって~とかになったら焦るからな……いや、もう死んでるけど。生きている時ならね?当然焦るでしょ。まだ学生だったわけだし。
 だから、お嬢様の気持ちは分かる……分かるんだけど……。

「リア充滅しろ」

 昼休みになり、ただただ目の前で繰り広げられる乙女ゲームの世界……というより、両手に男。それに甘える女。いちゃいちゃらぶらぶとハートが飛び交っているような光景を見ていなければいけないって、一体どういう拷問だろう。
 こういうシーンはゲームの中だけで良い……リアル目の前で見たくない。もういっそゲームがやりたい……なんでこの世界にはゲームがないんだ……いや、俺幽霊だったから出来ないか……くそっ!

「それにしても……こいつらには嫉妬とか独占欲とかないのか?」

 ヒロインと仲良くする男二人。気に入らないとか、そういう感情は湧かないのだろうか。……俺なら遠慮して遠ざかる気はするが……こういう修羅場になりそうなのは二次元だけで充分なんだよ。
 無駄に緊張でドキドキしながら、ヒロインから離れないように気を付けて観察する。……もう観察したくないけど。ギブアップしたい……。

「やーっと離れたぁ!」

 予鈴の鐘が鳴り、二人と別れたヒロイン。このまま授業かと思いきや、教室とは全く別の方向へ向かう。

「サボリか。不良め」

 と言いつつも、ゲーム発売日やゲームしたいからとサボる事があった俺は、ただのオタク的な引きこもりだと思える。……ゲームで徹夜しての欠席?普通にサボるよりきっと不健康的だ!だけど不良になったわけではないから道徳的には良し!いや、ごめんなさい。
 生きていた時の懺悔を頭の中で繰り広げつつも反省はせず、ヒロインの後を追いかける。……こうしていると、ただ引きずられて憑いて行っていただけというのは、しんどくもあるが楽でもあった気がする。
 どこまで行くんだと思っていれば、ヒロインは目につかない校舎裏の木陰に座り、ノートを取り出した。

「えーっと、ブルーノには甘い物を差し入れて……ルネにはサッパリしたものだったよね」

 言いながら、ノートのメモに目を通し、必要な所は更に書き込みを入れているようだ。
 認識されていないから、横から堂々と覗き込めば、それは手帳のようなもので、びっしりと日本語でメモが書き込まれていた。
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