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24.もうありきたりなシナリオですな

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「まぁ、これが前世の記憶だとハッキリ確信出来たのは学園に入学した時ね」

 溜息をついたお嬢様は、一口紅茶を口に含むと続けた。
 王子は何故か立太子していないまま学園へ入学し、ヒロインと出会った。それまで付かず離れずといった所だが、お互い嫌いあう要素もなく、そしてお嬢様は王子への恋心はなく、友人のような関係で進んでいっていたのに……。

「どんどん嫌われていったわ」
「……」

 これが強制力なのか。
 この世界に生まれて十年以上。前世の記憶を鮮明に思い出せと言われても、流石に遠い昔になっている。その中でも必死に手繰り寄せた記憶の中、お嬢様は王子やヒロインとは極力合わず、距離を置いて生活しつつも婚約者として最低限の役目は果たしていたそうだ。……家の為に。
 お貴族様って面倒くさいのな。既にお家とか血筋とか、残す必要性がない家柄な俺的には本当面倒くさい以外に言いようがない。
 そして、嫉妬もなければ嫌がらせもしていない。むしろ王子のフォローをしつつ、二人の邪魔をしないようにしていても、存在しているのが悪いのかと言わんばかりに、会えば睨みつけられたり無視されたりと嫌われていった。

「疑問にしか思えない……何もしていない事がむしろ悪かったのかと」
「いや、でもこの場合は何をしても悪くなるんじゃないか?」
「強制力と言ってしまえば、それまでよね……」

 何もしてなくとも憎悪に満ちた目で見られるのであれば、変に婚約解消を申し出ても、下手に二人を応援する事を言ったとしても、悪手にしかならないように見える。
 本当に謎だ。強制力としか言いようがない。

「ルート的には王太子ルートをヒロインは選んでいる感じか……あれ?でも」
「……虐めてはいないからね……」

 王太子ルートに突入するのであれば、悪役令嬢からの虐めは必須だ。むしろ、それを怠った事がシナリオ改変に繋がるのか……?よく分からない。

「他のルートも攻略してるのかもしれないと思いながら……階段イベントがあったのよ」
「あっ!」

 お嬢様の言葉で思い出した。
 悪役令嬢とヒロインが口論の末、ヒロインが階段から落ちるイベントがあった!……あれ?でもお嬢様は嫌がらせをしていないのであれば、口論も発生しないのでは……。

「嫌がらせを止めて下さいと言われたわ……」
「ホワイ?」

 思わず変な声が出た。お嬢様はそんなの気にしてないのか、気にする余裕がないのか頭を抱えている。

「どうやら小さな嫌がらせはされてたらしく、それを私だと思っているようだったの……」
「あー……」

 本当に、もう小説の世界かと言いたい。
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