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23.お嬢様の過去

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 お嬢様に憑きながら、周囲の情報を耳に入れていく。そのどれもこれもが同じものだった。

「どうして王子が昏睡状態なんだ?というか、今までの生きてきた経緯を聞いても?」

 邸についてからそう切り出した俺に、お嬢様は少し嫌そうな顔をしたが、すぐに切り替えて机の引き出しから一冊のノートを取り出した。

「これが日記だけど……あまり人に見せたくはないわよね」

 そりゃそうだ。日記なんて人に見せるものではない。てか俺だって、もし日記を書いてたとして、それを見られたら……うん、恥ずか死ねる。
 しかし、こっちも現状を細かい所まで把握しないと……お嬢様が危ないんじゃないか?そう思って、俺も話を切り出した。

「流れてる噂だけど、お嬢様が王子を階段から突き落として殺しかけたってなってるぞ」
「そんな!それじゃ不敬罪どころか大逆罪じゃない!」

 お嬢様は真っ青になって、椅子から立ち上がり俺の方へ詰め寄った。

「そんな……それこそ処刑……しかもお家断絶まっしぐらじゃない……」
「だからこそ、王子が何故そんな状況になったのか知りたい。そして、そんな噂を流したのはタイミング的にみてヒロインだろうと思う」

 俺の予測に、お嬢様は頷いた。
 王子が昏睡状態へ陥ったタイミングではなく、今こんな噂が流れるなんて、ヒロインがお嬢様を退場させようという意思で行われたとしか思えないのだ。

「……何から話していけば良いのかな……」

 お嬢様は日記を開きながら、ポツリポツリと話し出した。
 うっすらと、ここではない場所の記憶があったお嬢様は、物心ついた時にはこの世界での生活に違和感を感じていたそうだ。
 第一王子と出会った時は、何故か分からないけれど泣いた程だと言う。
 ゲームでのシナリオであれば、悪役令嬢であるお嬢様が王子に一目ぼれして婚約が結ばれた……という設定だった筈だが、お嬢様が泣いた事で既にシナリオとは変わっていた。
 だけれど、婚約は王家の方から結ばれた。やはり王族と婚約を結ぶのであれば高位貴族である程良いといった所だろう。
 どうしてか仲良くしたくない、悪い予感がする。好きになってはいけない。そんな予感が胸いっぱいに広がっていたが、お嬢様自身その頃の記憶はあまりないらしい。

「一応、日記はつけていたみたいだけど……淑女の嗜みとして当然の事だったかしらね」
「そもそも幼い頃の事を鮮明に覚えている方が珍しいかと」

 俺だって十歳までの記憶を鮮明に覚えているのかと言われれば微妙だ。それなりに印象深い事は記憶しているけれど、それだけだと思う。
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