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21.見えない未来
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「王太子が立太子していない事と、昏睡状態になっている事……か」
「ゲームでの違いと言えば、その2つね。婚約の回避は出来なかったし……」
「まー政略結婚なら、そういうものでは?」
「……気が付けば親が決めてきていたわ……」
ゲームと異なる点は、この2つのみ。
お嬢様が書いたメモの山を前に、ゲームの内容をすり合わせていったが、メモと違う部分は異なる点のみだった。お嬢様よ……前世の記憶が曖昧といっても、ゲーム内容だけは必死に思い出したのか、と思わざるおえない。
ゲームは、他のゲームと大差ないストーリーだったりする。
政略的に婚約を結ばれた第一王子と公爵令嬢。第一王子は立太子し、王太子となる。側近と護衛が居て、常に3人行動だ。
学園へ入るとヒロインに惹かれていく3人。ヒロインは3人の中でルートを選ぶ。側近なら勉強したり、護衛なら剣術を習ったり……王太子は特にそういうのがなかったんだよな……難関ルートでもあったし。
今はちょうど学園生活真っただ中。
婚約破棄からの処刑もしくは追放と言ったイベントが始まるのは卒業パーティで、まだ先の話だ。
「ここからの退場……?」
「既に悪役令嬢としての噂は流れてるわ……」
退場させるにも、公爵家の令嬢だ。難しいのではないかと眉をひそめれば、まさかの言葉がお嬢様から放たれた。何そのリーチ。次でビンゴ!とでも言わんばかりの悲壮さよ。
「私に殿下への気持ちはなかったし、邪魔もしてないけれど、いつの間にか嫉妬してヒロインに嫌がらせをする令嬢という噂は流れたわ……接点を持たないようにしていたのに……」
どこか悔やむような声でお嬢様は目を伏せた。きっと一人で色々抗ってきたんだろう事は分かる。
「これが俗にいう強制力という事か?」
「強制力があるのに立太子しないというのは……?」
「ん~」
考えれば考える程、思考の沼にはまっていく。婚約に対し強制力が働いたとして、立太子にも強制力が働いて当たり前だろう。そうじゃなければヒロインのシンデレラストーリーは成立しないのだから。
「更に言うなれば、殿下が昏睡状態という退場状態になる事もおかしいと思うの……」
「だからセットで悪役令嬢も退場という処置か?」
ヒロインの思考を読むつもりで、ポツリと呟いた俺の言葉に、お嬢様は真っ青になって震え出した。
「……処刑以外でも、私が死ぬ場合もある……のね」
ただでさえ決められた処刑ルートに抗おうとしていた所に、突如現れた見えない未来に向かっているという恐怖心を抱くお嬢様に、俺はかける言葉がなかった。
「ゲームでの違いと言えば、その2つね。婚約の回避は出来なかったし……」
「まー政略結婚なら、そういうものでは?」
「……気が付けば親が決めてきていたわ……」
ゲームと異なる点は、この2つのみ。
お嬢様が書いたメモの山を前に、ゲームの内容をすり合わせていったが、メモと違う部分は異なる点のみだった。お嬢様よ……前世の記憶が曖昧といっても、ゲーム内容だけは必死に思い出したのか、と思わざるおえない。
ゲームは、他のゲームと大差ないストーリーだったりする。
政略的に婚約を結ばれた第一王子と公爵令嬢。第一王子は立太子し、王太子となる。側近と護衛が居て、常に3人行動だ。
学園へ入るとヒロインに惹かれていく3人。ヒロインは3人の中でルートを選ぶ。側近なら勉強したり、護衛なら剣術を習ったり……王太子は特にそういうのがなかったんだよな……難関ルートでもあったし。
今はちょうど学園生活真っただ中。
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「ここからの退場……?」
「既に悪役令嬢としての噂は流れてるわ……」
退場させるにも、公爵家の令嬢だ。難しいのではないかと眉をひそめれば、まさかの言葉がお嬢様から放たれた。何そのリーチ。次でビンゴ!とでも言わんばかりの悲壮さよ。
「私に殿下への気持ちはなかったし、邪魔もしてないけれど、いつの間にか嫉妬してヒロインに嫌がらせをする令嬢という噂は流れたわ……接点を持たないようにしていたのに……」
どこか悔やむような声でお嬢様は目を伏せた。きっと一人で色々抗ってきたんだろう事は分かる。
「これが俗にいう強制力という事か?」
「強制力があるのに立太子しないというのは……?」
「ん~」
考えれば考える程、思考の沼にはまっていく。婚約に対し強制力が働いたとして、立太子にも強制力が働いて当たり前だろう。そうじゃなければヒロインのシンデレラストーリーは成立しないのだから。
「更に言うなれば、殿下が昏睡状態という退場状態になる事もおかしいと思うの……」
「だからセットで悪役令嬢も退場という処置か?」
ヒロインの思考を読むつもりで、ポツリと呟いた俺の言葉に、お嬢様は真っ青になって震え出した。
「……処刑以外でも、私が死ぬ場合もある……のね」
ただでさえ決められた処刑ルートに抗おうとしていた所に、突如現れた見えない未来に向かっているという恐怖心を抱くお嬢様に、俺はかける言葉がなかった。
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