17 / 65
17.離れることができた?
しおりを挟む
「あぁ…………退屈だ。退屈で死にそうだ」
そんな俺の声が聞こえているだろうお嬢様は、何も聞こえてませんよという感じで他の令嬢達と昼食を取っている。
楽しい聖地巡礼も、終えてしまえば退屈で暇で孤独な毎日が待っているだけだった。
お嬢様の行くところに憑いて行くだけ。
お嬢様の近くに居るだけ。
貴族のお嬢様達とは言え、その会話は婚約者の事であったり、噂話だったりと、普通に女の子をしているようだ。……ただ、表情は常に笑顔で何を考えているか分からない人形のような怖さもあったが。
俺としては、ガールズトークに聞き耳を立てているようで、気恥ずかしさと申し訳なさもあったが、日に日に慣れていく自分を感じていた。
……というか、どうせ認識されていないんだし、もうどうでも良いかとさえ開き直ったという方が正しいのだが……。
「さすがにさっきのは止めてもらえる?」
お花を摘みに……と言ったお嬢様は人気のない所へ行ったかと思うと、俺に対して苦言を呈した。
「ん?何が?」
「あのねぇ……こっちは笑いを堪えるのに大変なのよ!」
すっとぼけた俺に対して、少しイラッとしたようにお嬢様は返す。
うん、やった事と言えば、とある令嬢の隣で変顔をしたり……お嬢様の正面に座る令嬢の背後から手を出して阿修羅や千手観音に見えるよう遊んだり……か。
さすがのお嬢様でも笑いを堪えるのは大変だったのか……。
「あっ」
戻ろうとしたお嬢様は、声を上げて柱に隠れた。俺もすぐにお嬢様の視線を追うと、その先にはオレンジの髪をした可愛らしい令嬢が居た。
両サイドには男二人を侍らして楽しそうに笑っている。
「……ヒロイン?」
俺の言葉に、お嬢様は頷いた。
処刑の原因となるものに、そりゃ近づきたくないわな。そして、一緒に居るのは王太子の側近と護衛と言った攻略対象者か。
……ヒロイン……ねぇ……。
そんな事を考えて、ちょっと顔を間近で見てやろうと近づいた隙に、お嬢様が遠く離れた所まで逃げるよう速足で歩いて行っていた。
「あれ!?ちょ!!」
思わず、お嬢様の後を追いかける。
俺の声が聞こえたのか、お嬢様は少しだけ首を傾げる動作をした。ったく、行くなら行くって言ってくれれば良いのに……。おかげで、全速力でお嬢様の元へ走るはめになって疲れる……。
と、ここまで考えて俺は首を捻った。
今までは、お嬢様と一定の距離以上離れる事が出来なくて、離れようとしても無理やり引っ張られていたのだ。
「……離れる事が出来た……?」
「え」
俺が呟いた言葉に、お嬢様もうっかり反応してしまう位、驚いていた。
そんな俺の声が聞こえているだろうお嬢様は、何も聞こえてませんよという感じで他の令嬢達と昼食を取っている。
楽しい聖地巡礼も、終えてしまえば退屈で暇で孤独な毎日が待っているだけだった。
お嬢様の行くところに憑いて行くだけ。
お嬢様の近くに居るだけ。
貴族のお嬢様達とは言え、その会話は婚約者の事であったり、噂話だったりと、普通に女の子をしているようだ。……ただ、表情は常に笑顔で何を考えているか分からない人形のような怖さもあったが。
俺としては、ガールズトークに聞き耳を立てているようで、気恥ずかしさと申し訳なさもあったが、日に日に慣れていく自分を感じていた。
……というか、どうせ認識されていないんだし、もうどうでも良いかとさえ開き直ったという方が正しいのだが……。
「さすがにさっきのは止めてもらえる?」
お花を摘みに……と言ったお嬢様は人気のない所へ行ったかと思うと、俺に対して苦言を呈した。
「ん?何が?」
「あのねぇ……こっちは笑いを堪えるのに大変なのよ!」
すっとぼけた俺に対して、少しイラッとしたようにお嬢様は返す。
うん、やった事と言えば、とある令嬢の隣で変顔をしたり……お嬢様の正面に座る令嬢の背後から手を出して阿修羅や千手観音に見えるよう遊んだり……か。
さすがのお嬢様でも笑いを堪えるのは大変だったのか……。
「あっ」
戻ろうとしたお嬢様は、声を上げて柱に隠れた。俺もすぐにお嬢様の視線を追うと、その先にはオレンジの髪をした可愛らしい令嬢が居た。
両サイドには男二人を侍らして楽しそうに笑っている。
「……ヒロイン?」
俺の言葉に、お嬢様は頷いた。
処刑の原因となるものに、そりゃ近づきたくないわな。そして、一緒に居るのは王太子の側近と護衛と言った攻略対象者か。
……ヒロイン……ねぇ……。
そんな事を考えて、ちょっと顔を間近で見てやろうと近づいた隙に、お嬢様が遠く離れた所まで逃げるよう速足で歩いて行っていた。
「あれ!?ちょ!!」
思わず、お嬢様の後を追いかける。
俺の声が聞こえたのか、お嬢様は少しだけ首を傾げる動作をした。ったく、行くなら行くって言ってくれれば良いのに……。おかげで、全速力でお嬢様の元へ走るはめになって疲れる……。
と、ここまで考えて俺は首を捻った。
今までは、お嬢様と一定の距離以上離れる事が出来なくて、離れようとしても無理やり引っ張られていたのだ。
「……離れる事が出来た……?」
「え」
俺が呟いた言葉に、お嬢様もうっかり反応してしまう位、驚いていた。
1
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-
星井柚乃(旧名:星里有乃)
ファンタジー
旧タイトル『美少女ハーレムRPGの勇者に異世界転生したけど俺、女アレルギーなんだよね。』『アースプラネットクロニクル』
高校生の結崎イクトは、人気スマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』のハーレム勇者として異世界転生してしまう。だが、イクトは女アレルギーという呪われし体質だ。しかも、与えられたチートスキルは女にモテまくる『モテチート』だった。
* 挿絵も作者本人が描いております。
* 2019年12月15日、作品完結しました。ありがとうございました。2019年12月22日時点で完結後のシークレットストーリーも更新済みです。
* 2019年12月22日投稿の同シリーズ後日談短編『元ハーレム勇者のおっさんですがSSランクなのにギルドから追放されました〜運命はオレを美少女ハーレムから解放してくれないようです〜』が最終話後の話とも取れますが、双方独立作品になるようにしたいと思っています。興味のある方は、投稿済みのそちらの作品もご覧になってください。最終話の展開でこのシリーズはラストと捉えていただいてもいいですし、読者様の好みで判断していただだけるようにする予定です。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。カクヨムには第一部のみ投稿済みです。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる