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05.テンプレ通りですね、逃げたいです

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 ……シナリオ!?
 まさか、本当にここはゲームか小説の世界で、転生者って奴か!?

「なーんてな」

 それこそ本当に今流行りの小説にでも入り込んだのかとさえ思える。
 しかも幽霊として。
 そんな事はこれっぽっちも望んでいない俺としては、正直興味がない。否、全くないという事ではない。同じ日本人なのかとか、生きてた時代は同じなのか等、気になる事は色々あるけれど、意思疎通する術がない以上、ただ俺の孤独感が増すだけな気がした。

「悪役令嬢の末路はどうなるの……」

 もう一度、部屋から脱出するのを試みようと、隣を通り過ぎた時に、そんな声が聞こえた。
 男達から責められている、この令嬢はやはり悪役令嬢なのか……地味だけど。まぁ、それなりに刺繍が多い服を着ているという事は豪華なのかもしれない……現代では着物ですらプリントされた柄になってた気がするけど。確か刺繍の着物は高いとか、ばーさんが言ってたような。
 そう考えると高いのかもな、なんて思うも、真っ青な顔した悪役令嬢につい見入ってしまった。
 俺的には幽霊で、現実ではない話だが……今こうして転生した人にとって、今この状態は現実なんだよなー。俺には関係ないけど。

「どっちが、かわいそうなんだろうなぁ」

 当たり前のように独り呟く。この声が誰かに届けば良いのに。なんて少しの希望を乗せながら、幽霊として居る自分と、結末が決まっているだろう生きている悪役令嬢と、マシなのはどちらだろうかと考えた。
 まぁ、考えてもそれは個人によって違う事で。そんな事を思ったとしても現状は変わらないわけで。

「どうでも良いか…………んっ!?」

 扉に向かおうとし、まだ距離が数歩あるにも関わらず、俺の足は進まなくなった。

「え?なんで?どして??」

 さっきより扉に近づけなくなった俺は小さなパニックを起こす。
 今の間で変わった事と言えば!?もしや俺消える!?いやもう消えても良いんだけど!?いやでも心残りもクソもないけど、いきなり消えるとかあるなら怖いなぁ!?

「ランデー公爵令嬢、いつまで此処に居る気だ」
「……しかし、私は殿下の婚約者として……」
「殿下が愛しているのは、アニス嬢だ。名だけの婚約者に付き添われるより、アニス嬢に居てもらう方が殿下も喜ぶだろう」

 じたばたともがいている間に、男の一人が悪役令嬢に冷たい声で射るように話しかけた。
 気丈に振舞っているだろう公爵令嬢と呼ばれた悪役令嬢は、少し歯を食いしばっているようだ。てか、公爵令嬢が悪役令嬢で殿下の婚約者かー。テンプレすぎる……いやしかしだな。

「そういう修羅場は俺の居ないとこでやってくれー!!」

 どうあがいても逃げられない俺は、テンプレ通りの言い争いを聞く事になるようだ。
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