【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

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「それは嫌だ!」

 カラルスが珍しく声を荒げて反論した事に驚き、つい目を見開いてしまった。
 歯を食いしばっているカラルスを珍し気に、つい見てしまう。……そもそも、この婚約をカラルスが望んでいるとは思えないのだけれど……?
 いつも愛情を表現していたのは私だけで、行動を起こしていたのも私だ。それでいて、カラルスに舐められてしまった結果になったという事までは理解しているのだけど……。

「好ましく……思っていた」

 ポツリと、カラルスが呟いた言葉を幻聴かと思ってしまう。……カラルスの口から発せられた……言葉?そんな事を思いながら、つい眉間に皺を寄せてしまう。
 どこまで諦めが悪いんだろう、私は。そんな幻聴を聞いてしまう程に。

「好きだと……自分の気持ちを素直に伝える事なんて、出来ない事だから……」

 幻聴だと思っていた言葉は、確実にカラルスから放たれていて、驚きの感情が心を支配する。
 ……私はいつも自分の心をそのままカラルスに伝えていたのだけれど……それを好ましく思われているとは思ってもいなかった。
 視線を下に落としながら、恥ずかしそうにカラルスは更に呟くように言葉を放っていた。
 淑女教育が板についてきてからは少し寂しい思いをしていたとか……しかしキチンと教育を受けているアマリアに感心していたとか。

「……教育の成果を見せるのは他の人が居る前だけで良い……」

 おおよそカラルスからとは思えない言葉まで飛び出てきて、心が勝手に喜び跳ねる。なんて諦めの悪い心なのだろうか。でも……嬉しい。嬉しさに感情が支配されていく反面、悔しいという気持ちさえ溢れていく。
 しかし、それでも……心のどこかであるのは前回の事。

「……本当にランテス男爵令嬢の事は何とも思っていなかったのですか?教育係の件も……私で良かったのですか?」
「何とも思っていない!それに……王太子殿下の命令に背くわけにはいかないだろう。アマリアに任せて正解だったと思っている。王女殿下にも笑顔が増えたと聞いていて、王太子殿下も満足にしている」

 確かにそうだ。だけど……前回はそれすら知らず……。

「……アマリアが忙しいなら、と考えはしたが……」

 ――ズキン。

 胸の痛みが走る。けれどどこか納得できた。
 カラルスの元へ会いに行かなくなった私。そして飛び込む教育係の話。……忙しいのならば……と考えもなく頼んだ。
 そして起こる事件。
 歪んだタイミングと状況で、私は罠に嵌められて……何もせず考える事すらしなかったカラルスは……きっと私を助ける方法はないと思ったんだろう。
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