【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

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 むしろキッパリと拒絶していれば今回の事件は起こらなかっただろう。拒絶する事が、冷たく見えても、ある意味で本当の優しさとも言えるのではないだろうか。

「何もしない。それこそ罪ではないでしょうか。優柔不断な優しさは、時に残酷です」

 ……本当、人の事は言えないけれど。私の言葉にカラルスは目を見開いた。

「……ランテス男爵令嬢に感情は一切動いていなかった……むしろ鬱陶しいくらいだった……」
「ならば、切り捨てるのが公爵令息としても正しい行いではないでしょうか」
「……対応の仕方が分からなかったんだ……」

 そんな事をポツリと零すカラルスに、思わずため息を吐き出しそうになる。

 ――情けない。

 そんな事すら脳裏に過ってイライラするけれど……こうして目の前にカラルスが居る事に喜びと幸せすら感じる自分にもイライラする。
 本当に……自分の理性だけで感情が動かせるのならば楽なのに。

「アマリアに……似てたから」

 思ってもみない言葉に心が跳ねる。
 最初に支配したのは嬉しさ……でも似ていたという不愉快さがどんどん浸食していく。似ていたから何なのだろうか。そもそも、ランテス男爵令嬢に似ているというのはどういう意味か。……似ていても、全くの別人である事に変わりはないというのに。

「自分の感情に正直なところはアマリアに似ていて……正直、あしらう事に躊躇いを感じていたのは確かだ」
「それでも、私とランテス男爵令嬢は別人です。躊躇う方がおかしいのでは?」
「……アマリアなら、許してくれるかと」

 私なら許す。その言葉が心に重く響いた。
 好かれているからの自信か。好かれているのを分かっているからこそ、何をしても受け入れてもらえると思っていたのか。……それならば私の過失でしかないが、そこまで甘く思われていたのだろうか。
 ……私だって人間で、ちゃんと感情というものが備わっているというのに。とても馬鹿にされた気分だ。

「婚約者になら何をしても良いと?家柄的にも自分の方が優位だから許されると?」

 思わず冷たい声が出て、慌てたカラルスが視線を上げてきた。
 カラルスがそんなつもりではない事を理解している。だけれど、結局周囲から見ればそういう問題になるのだ。

「……そもそも、優先順位の問題だと思いませんか?婚約者と、それ以外の令嬢。貴族として、どちらを優先した行動を起こすのか、という点ではありませんか?一時の感情や躊躇いなどではなく」

 ハッキリとカラルスの目を見て告げる。

「婚約者だからと甘えて良い問題ではない事を理解していますか?私ならば何しても良いという判断での婚約ならば……白紙にしましょう」
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