【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

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「お久しぶりです」
「……あぁ……」

 嫌味の様な一言に、少し気まずそうにカラルスは返す。
 煌びやかなサロンで無言の時間が続く中、私は色々と考えていた。
 例え生き延びたとしても……納得なんていかないのだ。前回、処刑されたという記憶が生々しく残っていて、そこにある感情は一言で表しきれないものだ。無念、恨み、悲しみ……失望。

「……何用でしたでしょうか」

 訪れて来たが一向に要件を言わないカラルスに、こちらから単刀直入に声をかけた。でないと、私の本題が入れないからだ。

「それは……」

 何とも歯切れの悪い。カラルスの優柔不断さにイライラしてしまう。
 以前まではカラルスが何をしたとしても気にならなかったし、それこそ愛情ゆえの妄信的なものもあったのだろう。だけれど、今は色んな事が目についてしまう。

「私達の婚約はどうされますか?」

 私が唐突に切り出した本題に、カラルスの身体がビクリと震えた。
 しかし何も言い返してこない辺り、既に予想していた事だろう。そもそも、今回の事件はランテス男爵令嬢にあり、勿論学園での行いもしっかり調べられているだろう。勿論、それに対してカラルスの名前が出ていて当然だ。

 ――あれだけ愛していたのに、前は守ってすらもらえなかった。

 カラルスにそれを求めるのは酷な事かもしれないと、今回は思えてしまう。思えてしまっても……そんな人とこのまま一緒に居る未来なんて見えない。
 あの恐怖や……苦しみ、悲しみ、そして絶望……日々の押しつぶされそうな不安感。
 好きだからこそ現れる感情だろうけど、婚約者同士なのだから、そこは安心させてほしかった。信頼させてほしかった。……求めるものではないのかもしれないけれど、信用しようと自己暗示するのも何かが違う気がする。
 相手があってこその関係だから、自分1人で行うものではない。
 そして……信頼が崩れるのは一瞬で……そこから立て直すのは本当に大変なのだ。……私だって、本当に淑女教育を頑張った。これ以上失うものもなかったから我武者羅になれたとも言えるけれど。

「……ランテス男爵令嬢とは何もない」
「……それが通じるとでもお思いですか?」

 辛辣な言葉を返す。

「何もしていない」
「悪い意味でもしていませんね」

 私の言葉に隠された意味を感じとったのか、カラルスは苦痛の表情を見せる。
 そう、何もしていないのだ。受け入れる事もしていなければ……拒絶する事もしていない。それは優しさでも何でもないどころか、一層状況を悪くしているだけだというのに、だ。
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