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「ダメです!!」
大声を出すと同時に、テーブルへと置かれたお菓子を手で払いのけた。
そのまま王女殿下の前へ守るように立って、無断で私の名前を使った相手を睨みつける。
「こんな所で何をしているんですか!ランテス男爵令嬢!」
一瞬、驚いた表情をしていたランテス男爵令嬢だが、相手が私と理解した後は焦ったかのような表情になる。
「え……私はアマリア様に頼まれた事を……」
「私は何も貴女に頼んでいません!」
未だに言い逃れかのように私の名前を出すランテス男爵令嬢に対し、はっきりと否定する。
「何で今日いるの!?今日は教育係がない日でしょう!」
すぐに自分が何かを企てていたかのような自白をするのは、計画性が皆無だからか。そこまで賢くないからか。この騒ぎで見慣れない侍女はどうしていいのか狼狽えている間に、警備の者達が集まってきた。
「そのお菓子を調べて」
「何でそんな事を!」
王女殿下が兵士へ向けた一言にランテス男爵令嬢が慌ててお菓子を奪おうとするも、兵士と貴族令嬢では力の差が歴然だ。抵抗空しくお菓子は兵士達の手に渡り、この後しっかり調べられるだろう。
「この人、レガス伯爵令嬢のお友達だと言って会いに来ていたのだけれど……」
「お友達ではありませんね」
私の言葉にランテス男爵令嬢は悔しそうな恨みがましそうな表情をするが、ここはしっかり否定させてもらう。自分の感情的にも友達なんてあり得ないし、周囲に聞き込んでもらったところで絶対にありえない話だが、こんな人と友達だなんてレガス伯爵家の汚名にすらなってしまう。
「警備に問題があるようね」
王女殿下の言葉に、しっかりと頷く。どうして一介の男爵令嬢が、私が登城する日を知っているのか……それより、王女殿下と会ってお茶までする事が出来るという警備体制があまりにも酷すぎる。
――冤罪。
――毒殺。
2つの言葉が脳裏に蘇り、思わず身体が震えた。
こんな警備体制で、そしてランテス男爵令嬢のありえない大胆すぎるとも言える行動。
まさか。でも。そんな言葉がぐるぐると脳内を駆け巡っている時、ランテス男爵令嬢のヒステリックな叫びが響いた。
「あんたのせいじゃない!あんたなんて居なければ良いのよ!そうしたらカラルスだって私と一緒に居られるのに!」
「カラルス……?ジーン公爵令息?」
「王女殿下の教育係だって私がしたかったのに!ただ婚約者ってだけであんたがなってるし!貴族の政略結婚で、そんな程度の分際で!!」
王女殿下の呟きをかき消すように叫ぶランテス男爵令嬢の言葉に、私だけでなく周囲の者……勿論王女殿下も眉をひそめた。
大声を出すと同時に、テーブルへと置かれたお菓子を手で払いのけた。
そのまま王女殿下の前へ守るように立って、無断で私の名前を使った相手を睨みつける。
「こんな所で何をしているんですか!ランテス男爵令嬢!」
一瞬、驚いた表情をしていたランテス男爵令嬢だが、相手が私と理解した後は焦ったかのような表情になる。
「え……私はアマリア様に頼まれた事を……」
「私は何も貴女に頼んでいません!」
未だに言い逃れかのように私の名前を出すランテス男爵令嬢に対し、はっきりと否定する。
「何で今日いるの!?今日は教育係がない日でしょう!」
すぐに自分が何かを企てていたかのような自白をするのは、計画性が皆無だからか。そこまで賢くないからか。この騒ぎで見慣れない侍女はどうしていいのか狼狽えている間に、警備の者達が集まってきた。
「そのお菓子を調べて」
「何でそんな事を!」
王女殿下が兵士へ向けた一言にランテス男爵令嬢が慌ててお菓子を奪おうとするも、兵士と貴族令嬢では力の差が歴然だ。抵抗空しくお菓子は兵士達の手に渡り、この後しっかり調べられるだろう。
「この人、レガス伯爵令嬢のお友達だと言って会いに来ていたのだけれど……」
「お友達ではありませんね」
私の言葉にランテス男爵令嬢は悔しそうな恨みがましそうな表情をするが、ここはしっかり否定させてもらう。自分の感情的にも友達なんてあり得ないし、周囲に聞き込んでもらったところで絶対にありえない話だが、こんな人と友達だなんてレガス伯爵家の汚名にすらなってしまう。
「警備に問題があるようね」
王女殿下の言葉に、しっかりと頷く。どうして一介の男爵令嬢が、私が登城する日を知っているのか……それより、王女殿下と会ってお茶までする事が出来るという警備体制があまりにも酷すぎる。
――冤罪。
――毒殺。
2つの言葉が脳裏に蘇り、思わず身体が震えた。
こんな警備体制で、そしてランテス男爵令嬢のありえない大胆すぎるとも言える行動。
まさか。でも。そんな言葉がぐるぐると脳内を駆け巡っている時、ランテス男爵令嬢のヒステリックな叫びが響いた。
「あんたのせいじゃない!あんたなんて居なければ良いのよ!そうしたらカラルスだって私と一緒に居られるのに!」
「カラルス……?ジーン公爵令息?」
「王女殿下の教育係だって私がしたかったのに!ただ婚約者ってだけであんたがなってるし!貴族の政略結婚で、そんな程度の分際で!!」
王女殿下の呟きをかき消すように叫ぶランテス男爵令嬢の言葉に、私だけでなく周囲の者……勿論王女殿下も眉をひそめた。
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