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「好きな人とは、どんなものかしら?引き離されるとは、どんな気持ちなのかしら?」
「今度はどんな本を読まれたのですか?」
王女殿下がふいに漏らした言葉が気になり、問いかけた。
政略結婚が決まっている幼い少女にとって、恋愛など夢見るようなものなのだろう。いつもハッピーエンドの物語を読んでは楽しそうに進めてくれるのに、今日の表情はとても悲しそうだった。
「……?」
王女殿下は一瞬、キョトンとした顔をした後に、また悲しそうな表情をして話し出した。
「悲恋物よ……。私も、もし誰かを好きになっても結ばれないとしたら……こんな思いをするのかしら」
一冊の本を私に差し出した王女殿下は、今にも涙ぐみそうな表情だった。感情移入しやすいタイプなのだろう。王族として致命的かもしれないけれど、それも後々の教育で矯正されるのだろう……平民であれば良い事に思えるけれど。
「……少し気分転換に、庭園でお茶でもしませんか……?花は懸命に自分を綺麗に咲かせていますよ」
「……そうね!今しか見られない姿を見に行きましょう」
本当に賢いのだろう。すぐに前を向こうと顔を上げた幼い少女に少し胸が痛む。
今しかない景色を、今しかない思いを、今この瞬間を……大切に。ただそれだけしか出来ないけれど、それが難しくもある。
そして、その思いを付き通そうとしても……身分というものが邪魔をするのだ。……せめて、少しでも楽しく過ごせるよう、私に出来る事はないだろうかとさえ思える。
◇
「ルアのおすすめ、喜んで頂けるかしら」
前回、悲しい表情をしていた王女殿下の為に、とても切ないけれど最後は結ばれる恋愛小説をルアに教えてもらって持ってきた。あまりの切なさに、最後結ばれて本当に良かったと思える程だ。
本来、今日は王女殿下とお会いする日ではないのだけれど、せめて本だけでも侍女の方に渡せたらと持ってきたのだけれど……。
「ねぇ、貴女は本当にレガス伯爵令嬢のお友達なの?」
庭園前の通路を通りかかった時、そんな声が聞こえてきた。
「勿論ですよ~!」
「でも貴女がレガス伯爵令嬢からだと持ってきた本を、レガス伯爵令嬢は知らなかったようよ」
伸びた独特の声に背筋が凍りついたようにゾッとして鳥肌がたった。
声の先を探すように、私は視線を彷徨わせて二人の姿を見つけ、思わず駆け出した。
「おかしいですね~。あ、これはレガス伯爵令嬢からの差し入れですよ~!今市井で人気のお菓子ですって」
――いけない!
見た事のない侍女が1人ついているだけの状態で、王女殿下へ毒見もなく差し出されるお菓子。そして出された私の名前――。
一瞬にして脳裏に蘇ったのは、処刑される恐怖で……それから逃れたい一心が私の身体を動かした。
「今度はどんな本を読まれたのですか?」
王女殿下がふいに漏らした言葉が気になり、問いかけた。
政略結婚が決まっている幼い少女にとって、恋愛など夢見るようなものなのだろう。いつもハッピーエンドの物語を読んでは楽しそうに進めてくれるのに、今日の表情はとても悲しそうだった。
「……?」
王女殿下は一瞬、キョトンとした顔をした後に、また悲しそうな表情をして話し出した。
「悲恋物よ……。私も、もし誰かを好きになっても結ばれないとしたら……こんな思いをするのかしら」
一冊の本を私に差し出した王女殿下は、今にも涙ぐみそうな表情だった。感情移入しやすいタイプなのだろう。王族として致命的かもしれないけれど、それも後々の教育で矯正されるのだろう……平民であれば良い事に思えるけれど。
「……少し気分転換に、庭園でお茶でもしませんか……?花は懸命に自分を綺麗に咲かせていますよ」
「……そうね!今しか見られない姿を見に行きましょう」
本当に賢いのだろう。すぐに前を向こうと顔を上げた幼い少女に少し胸が痛む。
今しかない景色を、今しかない思いを、今この瞬間を……大切に。ただそれだけしか出来ないけれど、それが難しくもある。
そして、その思いを付き通そうとしても……身分というものが邪魔をするのだ。……せめて、少しでも楽しく過ごせるよう、私に出来る事はないだろうかとさえ思える。
◇
「ルアのおすすめ、喜んで頂けるかしら」
前回、悲しい表情をしていた王女殿下の為に、とても切ないけれど最後は結ばれる恋愛小説をルアに教えてもらって持ってきた。あまりの切なさに、最後結ばれて本当に良かったと思える程だ。
本来、今日は王女殿下とお会いする日ではないのだけれど、せめて本だけでも侍女の方に渡せたらと持ってきたのだけれど……。
「ねぇ、貴女は本当にレガス伯爵令嬢のお友達なの?」
庭園前の通路を通りかかった時、そんな声が聞こえてきた。
「勿論ですよ~!」
「でも貴女がレガス伯爵令嬢からだと持ってきた本を、レガス伯爵令嬢は知らなかったようよ」
伸びた独特の声に背筋が凍りついたようにゾッとして鳥肌がたった。
声の先を探すように、私は視線を彷徨わせて二人の姿を見つけ、思わず駆け出した。
「おかしいですね~。あ、これはレガス伯爵令嬢からの差し入れですよ~!今市井で人気のお菓子ですって」
――いけない!
見た事のない侍女が1人ついているだけの状態で、王女殿下へ毒見もなく差し出されるお菓子。そして出された私の名前――。
一瞬にして脳裏に蘇ったのは、処刑される恐怖で……それから逃れたい一心が私の身体を動かした。
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