【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

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 前回の事を振り返れば、私が会いに行かなくなった期間と被る。
 そう考えると、ランテス男爵令嬢が駄々をこねて、カラルスがそれを受け入れて、王女殿下の教育係になったのではないか。そんな事を思う。
 不敬があってはいけない、と言ったけれど、前回の事を考えてみれば、淑女としての教育レベルは同じだったかもしれない……せいぜい私の方が家柄的に上というだけだ。

「ねぇ、レガス伯爵令嬢、聞いてる?」
「あ、申し訳ございません、何でしたでしょうか」

 溜息が漏れ出るのを堪え、王女殿下へ意識を向ける。不敬にならないように気を付けなければ。そう思う反面、王女殿下はとても気さくで、むしろ市井に憧れを抱く少女だった。夢は平民になりたい!とまで言うので驚いた程に。
 話し相手として教養が必要だろうと思ったけれど、それは他の方がするので、王女殿下の息抜きとなるような相手を探していたらしい。……そうなれば、ますます前回の時はランテス男爵令嬢が行っていても問題はないという事になるのだけれど。

「……貴族として決められた婚姻って、どうなのかしら?レガス伯爵令嬢は幸せ……?」
「……っ」

 その言葉に、私は思わず息を詰まらせる。
 王女殿下の手にあるのは市井で流行しているという恋愛の物語だ。

「……恋って、どんなものかしら?とても素敵なものよね?」
「……そうとは限りませんよ……」

 困ったような微笑みで、それだけを返す。その言葉に裏を見抜いただろう王女殿下は、このお菓子美味しいのよ!と話題を変えた。それだけで、この王女殿下がとても察しの良い、賢い子どもだという事がわかる。とても教育をされているのだろう。
 幼い年齢でしっかり教育を受けているのであれば、確かに息抜きがなくては疲れてしまうだろう。今度市井のお菓子を……そう言おうとした所で、私はハッとする。
 ……毒を盛られた王族が、もし王女殿下なのであれば……。
 処刑される日まで、もう少しだ。ここは何としても乗り越えたい。
 ……乗り越えたところで、安心できるかは分からないけれど、今のように色々考えなくても済むだろう。できるのならば……婚約も白紙に戻したい。

「……王女殿下のお気に入りを私に教えていただけますか……?」
「えぇ!レガス伯爵令嬢も是非読んでみて!」

 物語の上でだけは幸せな恋人同士。現実は全く違うとしても……。
 せめて、そんな物語を読む事で、少しでも自分の心を慰められる事が出来たならば……。
 そうはいかないと分かっていても、何かに縋らないと自分の心がダメになってしまう気がしてしまう。
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