14 / 23
14
しおりを挟む
「何の話をしてたのー?」
「あぁ……」
そんな女の言葉に、素直に説明を始めるカラルスに対し、何かを期待する心はどんどん冷え切ってしまう。
どうして追い出さないの?
どうして説明するの?
それが優しさだと思っているのだろうか。心を切り離して、この二人を捉えて見てみれば、恋愛している男女か、もしくは都合良い関係性にしか見えない。
貴族としての務めをきちんと果たすつもりならば、切り離す事も時として優しさなのではないのか。……ただただ、カラルスが優柔不断なだけではないのか。
そう色々と思ったりするくせに、その都度心が痛む私は一番の愚か者だろうけれど。
「えー!何それ!私が行く!」
話を聞き終えただろうランテス男爵令嬢は、いきなりそんな事を叫び始めた。
「レガス伯爵令嬢はカラルスへ会いに来る暇もないくらい忙しいだろうから!私が行く!!」
「いや……しかし王女殿下に不敬があっては……」
「それはレガス伯爵令嬢も同じでしょ!?私が行きたいから私が行く!」
…………は?
何を言っているのだろう、この女は。先ほどから子どものように駄々をこねて、意味不明な理論をまくしたてているようにしか見えない。それを宥めるだけのカラルスには、ほとほと呆れ果ててしまう。
それに……会いに来る暇もない……?何だろう、これは喧嘩を売られているのか、それとも恋人としての牽制か。
「まぁ……確かに……。アマリアが忙しいのであれば……」
そう言って私に視線を向けるカラルスに、心の底から怒りが爆発した。
「婚約者の周りに目障りな虫が飛び交っていては会いに行く気も失せますわ。それを受け入れている以上、私がお邪魔虫みたいですもの。周囲の目をよく見てみて下さいな。貴族としての責任や婚約者としての立ち振る舞いも、第三者にどう見られているのかを」
そう言って私は席を立ち、扇で口元を隠した。
呆然としている二人に、更に追い打ちをかけるように言葉を畳みかける。
「婚約者としての立ち振る舞いは勿論の事、責任を果たしていない以上、私としても婚約者の責任を果たす必要はあるのかしら?家柄的に泣き寝入りして当たり前という考えでしょうか。よくお考え下さいな」
それだけ言って、私はサロンから出た。
え!?虫!?とか喚くランテス男爵令嬢の声だけが、扉の閉まる瞬間に聞こえたけれど、そんなのどうでも良い。むしろ今更的に気が付くとしたら、二人は同類同士お似合いなのだろう。
諦めにも似た感情が心の中に広がっていくのを感じながら、でもどこか諦めきれていない自分を自覚しつつ、私は帰路についた。
「あぁ……」
そんな女の言葉に、素直に説明を始めるカラルスに対し、何かを期待する心はどんどん冷え切ってしまう。
どうして追い出さないの?
どうして説明するの?
それが優しさだと思っているのだろうか。心を切り離して、この二人を捉えて見てみれば、恋愛している男女か、もしくは都合良い関係性にしか見えない。
貴族としての務めをきちんと果たすつもりならば、切り離す事も時として優しさなのではないのか。……ただただ、カラルスが優柔不断なだけではないのか。
そう色々と思ったりするくせに、その都度心が痛む私は一番の愚か者だろうけれど。
「えー!何それ!私が行く!」
話を聞き終えただろうランテス男爵令嬢は、いきなりそんな事を叫び始めた。
「レガス伯爵令嬢はカラルスへ会いに来る暇もないくらい忙しいだろうから!私が行く!!」
「いや……しかし王女殿下に不敬があっては……」
「それはレガス伯爵令嬢も同じでしょ!?私が行きたいから私が行く!」
…………は?
何を言っているのだろう、この女は。先ほどから子どものように駄々をこねて、意味不明な理論をまくしたてているようにしか見えない。それを宥めるだけのカラルスには、ほとほと呆れ果ててしまう。
それに……会いに来る暇もない……?何だろう、これは喧嘩を売られているのか、それとも恋人としての牽制か。
「まぁ……確かに……。アマリアが忙しいのであれば……」
そう言って私に視線を向けるカラルスに、心の底から怒りが爆発した。
「婚約者の周りに目障りな虫が飛び交っていては会いに行く気も失せますわ。それを受け入れている以上、私がお邪魔虫みたいですもの。周囲の目をよく見てみて下さいな。貴族としての責任や婚約者としての立ち振る舞いも、第三者にどう見られているのかを」
そう言って私は席を立ち、扇で口元を隠した。
呆然としている二人に、更に追い打ちをかけるように言葉を畳みかける。
「婚約者としての立ち振る舞いは勿論の事、責任を果たしていない以上、私としても婚約者の責任を果たす必要はあるのかしら?家柄的に泣き寝入りして当たり前という考えでしょうか。よくお考え下さいな」
それだけ言って、私はサロンから出た。
え!?虫!?とか喚くランテス男爵令嬢の声だけが、扉の閉まる瞬間に聞こえたけれど、そんなのどうでも良い。むしろ今更的に気が付くとしたら、二人は同類同士お似合いなのだろう。
諦めにも似た感情が心の中に広がっていくのを感じながら、でもどこか諦めきれていない自分を自覚しつつ、私は帰路についた。
276
お気に入りに追加
3,965
あなたにおすすめの小説
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。
hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。
義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。
そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。
そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。
一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。
ざまあの回には★がついています。
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます
キョウキョウ
恋愛
回復魔法を得意としている、姉妹の貴族令嬢が居た。
姉のマリアンヌと、妹のルイーゼ。
マクシミリアン王子は、姉のマリアンヌと婚約関係を結んでおり、妹のルイーゼとも面識があった。
ある日、妹のルイーゼが回復魔法で怪我人を治療している場面に遭遇したマクシミリアン王子。それを見て、姉のマリアンヌよりも能力が高いと思った彼は、今の婚約関係を破棄しようと思い立った。
優秀な妹の方が、婚約者に相応しいと考えたから。自分のパートナーは優秀な人物であるべきだと、そう思っていた。
マクシミリアン王子は、大きな勘違いをしていた。見た目が派手な魔法を扱っていたから、ルイーゼの事を優秀な魔法使いだと思い込んでいたのだ。それに比べて、マリアンヌの魔法は地味だった。
しかし実際は、マリアンヌの回復魔法のほうが効果が高い。それは、見た目では分からない実力。回復魔法についての知識がなければ、分からないこと。ルイーゼよりもマリアンヌに任せたほうが確実で、完璧に治る。
だが、それを知らないマクシミリアン王子は、マリアンヌではなくルイーゼを選んだ。
婚約を破棄されたマリアンヌは、もっと魔法の腕を磨くため修行の旅に出ることにした。国を離れて、まだ見ぬ世界へ飛び込んでいく。
マリアンヌが居なくなってから、マクシミリアン王子は後悔することになる。その事実に気付くのは、マリアンヌが居なくなってしばらく経ってから。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる