【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

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「全く……一体どうなっているのかしら」
「同じと思われたくもないわ」
「距離をとっている方が安全ね」

 ひそひそ、こそこそと、話はどんどん広がっていくのが耳に聞こえてくる。
 ランテス男爵令嬢の立ち振る舞いに、皆が不快を示し、そのうち何か事件を起こすのではないかと距離を取っていく。
 ランテス男爵令嬢が話かけようものなら、適当な相槌だけうって逃げていく様は、まるで省かれているようで……周囲には誰も居ない。それこそ、居てもカラルスだけだ。
 その様子を見ながら、私も前はあんな状態だったな、なんて事を思い出すと、嫌でも省かれていたのだと理解できた。私も、あの立ち振る舞いでは確かに何か問題を起こしていただろうし、起こしていても気が付かなかっただろう。それがあの冤罪事件に繋がっていく事を考えると、本当に教育というのは大事なのだと今更ながらに痛感する。

「そういえばアマリア様、お聞きになりました?ジーン公爵令息の事」
「……え?何をです?」

 振られた話に首をかしげて、質問に質問を返すと、皆が憐れんだ瞳で私を見てくる。
 ……婚約者なのに。私には何1つ知らされていないカラルスの事。

「……何てこと」
「本当に……ジーン公爵令息は何を考えているのか」

 だけれど、周囲に居た令嬢達は私の悲しみに同情するより、カラルスの行動に怒ってくれた。
 確かに、婚約者に対しての扱いではない。それはランテス男爵令嬢の事も含め、全てにおいてだ。

「大丈夫よ。今更だもの」
「……アマリア様……それでも……私達は気が付いていますよ?」
「本当に健気なアマリア様を……」
「今もまだ……目で追ってますよね」

 その言葉にハッとする。令嬢達は本当によく見ているし気が付くなと尊敬もさせられる。
 ……私は、まだ忘れる事が出来ないでいるのか、という事実と共に、私の心境を察して怒ってくれる周囲に慰められもした。
 ……健気……一途。言うのは簡単だけれど、どうしてこうも感情は自分の言う通りに動いてくれないのだろう。忘れたい、忘れられたら……この気持ちをなくせるのならば。
 そんな考えは幾度となく巡り、そしてその努力をしているつもりでもあるのに……どうしても無意識に探してしまうのだろう。

「……ジーン公爵令息が、王太子殿下の側近候補になったんですよ」
「どうして、あんな男が」
「周囲の状況を考えれば有りえませんわ。家柄しかないですもの」

 憤怒したかのように令嬢達は口々にそんな事を言い出すが……私は知らない。前回も含めて。
 ……カラルスが、王太子殿下の側近候補に選ばれていたなんて……全く知らなかった……。
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