【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

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「婚約を白紙にするには、どうしたら良いのかしら……」
「えっ!?どういう事ですか!?アマリア様」

 ふと漏らした言葉に、周囲が食いついた。
 カラルスとランテス男爵令嬢の姿を見ていると、どうしても思ってしまう。それは……冤罪をかぶせられた時の姿と被り、私の心を鋭く突きさすのだ。
 このまま裏切られ処刑されるという未来が脳裏をよぎり、私の心を不安に染めていく位ならば……以前とは違う道を選ぶべきだろうし、そもそも見ているのも辛いこの現状から逃げ去っても良いのではないかと思う。
 むしろ、今のこの状態で婚約者と胸を張れるわけでもない。むしろ婚約者って一体何なのだろうとさえ思う。

「あんな女よりアマリア様のがお似合いです!」
「公爵夫人は覚える事が沢山あるんですよ!」
「努力と成長がないと無理です!」
「アマリア様は、それがあります!」

 作り笑顔で微笑む。だって私は、そんな事を前回やっていない。という事は、全く認められていなかったという事だ。
 ……あのまま結婚していたとして、私は公爵夫人として何も出来なかっただろう。むしろ出来損ないの烙印しかなかったという事を理解した。

「でも……こんな状態ではそう思いますよね……」
「これでは、どちらが婚約者なのか……」
「ジーン公爵令息ともあろう方が……」

 皆の視線は公の場にも関わらず、いちゃつくかのように寄り添っている二人に注がれる。まぁ、ランテス男爵令嬢がカラルスに寄りかかっているだけなのだけれど……注意をしないし、振り払わないのであれば同罪だ。だって、それを許している事になるのだから。

「……伯爵家からは言い出しにくい事よね……」
「……これがジーン公爵の耳にでも入れば……」
「……それでも公爵が動くのか……」

 何だかんだで、私の気持ちが分かるのか、皆考えてくれはするのだけれど、階級的にこちらから婚約を白紙にするなんて言い出す事は叶わない。どう足掻いても家柄はカラルスの方が上なのだ。
 貴族同士の縁繋ぎである婚姻だけれど、こんな状態で結婚するというのは裏切り行為に近いというのに……。むしろそれでも何も言えないだ。
 ……せめて……婚姻を結ぶのであれば……お互い尊重し合えるような相手が良いし、せめてもの信頼関係くらいは欲しいと思う。
 もう恋愛感情なんて望まないから……。

 ――どう足掻いても、諦めようと心に決めても、感情は言う事を聞いてくれない。

 二人を見ると未だに引き裂かれそうな心の痛みを感じるし、今すぐにこの場を逃げ出したい衝動にも駆られる。
 すぐに忘れられる方法があるのならば。
 すぐに諦められる方法があるのならば。
 あなたへの恋心がすぐになくなるのであれば。
 私は喜んでそれを実行するというのに。
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