【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

文字の大きさ
上 下
4 / 23

04

しおりを挟む
「アマリア、ほら挨拶しなさい」

 初めてカラルスと出会ったのは八歳の頃。婚約者として紹介された時だった。
 伯爵家の我が家と、公爵家との縁談で、我が家にとっては格上の家柄と縁を結べる喜ばしい事である。
 貴族として家の繋がりを持つ為に選ばれた婚約者でしかない……筈だったけれど、私は違った。一目見た時から好きで好きで……。
 一緒に遊んでいれば、更に好きになって行った。
 顔や声……優しさや気遣いなど、良いところを上げ始めたらキリがない。むしろ欠点なんて見当たらないくらいで、私にとっては勿体ないと思えてしまう程の婚約者だった。

「カラルスー!」
「アマリア、危ないよ」
「お嬢様!!」

 訪れてきたカラルスが部屋から見えれば、そのままカラルスの元へ走って行って飛びつく。淑女らしくないと言われればそれまでだけれど、少しでも一緒に居たい。側に居たい。
 感情を隠せと言うけれど、溢れ出る気持ちを抑える方法なんて分からなかった。ただただ、私は――。

「カラルス!大好き!」

 思うがままを言う。
 溢れ出た感情を言葉にする。
 ただただ、それだけ。

 少し照れたかのように頬が染まるも、何かを言う事もなく素っ気ないカラルスだけれど、そういう所もまた好きで。思わずカラルスの腕にしがみ付く。

 何故か絶対的な信頼を持っていて。
 側に居るのが心地よくて。
 ずっと、このまま続くと思っていた。
 二人の関係は死ぬまで変わらないと思っていた……。
 ……そう、私だけは――。


 ◇


「カラルス様~!」

 甘い声で私の婚約者と同じ名前を呼ぶ声が聞こえた。
 学園に入ってからは忙しいという理由で一緒に通う事もない。更に言うならば、どれだけ探して追いかけても、学園でまともに顔を合わせる事さえない。
 会えたとしても、すぐにどこかへ行ってしまうカラルスに、いっそ避けられているのではないかと言う不安が頭の中で過るも、婚約者だという肩書が自分の中で強みにもなっていた。
 しかし、そこに愛情があるのか……カラルスにとっては、ただ貴族の政略結婚でしかないのではないか。会えない不安から考えれば考える程、ネガティブな思考に染まっていく。
 そんな中で、女の甘い声でカラルスの名前を聞けば、思わずその姿を探してしまうわけで……。

 ――見なければ良かった。
 ――探さなければ良かった。

 女の人が、カラルスに身を寄せ、腕を絡ませている姿なんて見たくなかった。

「っ」

 名前を呼ぼうとするも、吸い込んだ息が喉を鳴らすだけで、言葉として口から音が発せられる事はなかった。
しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります

柚木ゆず
恋愛
 婚約者様へ。  昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。  そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。

hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。 義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。 そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。 そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。 一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。 ざまあの回には★がついています。

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

処理中です...