【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

文字の大きさ
上 下
2 / 23

02

しおりを挟む
「お嬢様!いつまで寝てるんですか!?」

 カーテンが開かれ、まぶしい朝日が部屋に入り込み、瞼を閉じたままでも分かる眩しさに目を覚ます。
 侍女が朝の用意に訪れ、モーニングティを差し出されるも、私は現状を理解するのに精いっぱいだ。というより、寝起きで頭の回らない状態では混乱に混乱を呼ぶだけだ。

 ――確か私は死んだ筈。

 それだけは確かな事だと言い切りたかったけれど……本当に?
 こうやって朝を迎えて起きれば、どちらが夢なのか分からなくなるほどだ。でも自分的には両方現実のように思えて仕方ない。だけれど……どうして?
 両方を現実だと考えるならば、時間が巻き戻ったという事だろうか。

「お嬢様……?大丈夫ですか?」

 侍女であるルアが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「ルア……今日は何年何月何日……?」

 いつも通りの朝を迎える。そう、いつも通りすぎて今日がいつか分からない。
 もしかして処刑されてなくて、処刑の翌日かもしれない。そんな事を願いながら問いかけると、ルアは怪訝な表情をしながら、およそ一年前の日付を口にした。

「学園に入る……前……」
「お嬢様……?」

 私の言葉にルアは更に心配したかのような焦った声を出す。その事に私は少し焦り、ありがとうと声を出し、紅茶を手に取った。
 その様子を見てルアは安心したように息を吐き出した後、言葉を続けた。

「本日はジーン公爵令息様がいらっしゃいますからね。……でも、体調が悪いならあまりご無理をなさらないようお願いしますね」

 カラルス・ジーン公爵令息。
 私にとって最愛の人。そして……私を見捨てた人。
 巻き戻る前であれば、体調が悪かろうが、何があってもカラルスが来ると言うならば絶対に会う。むしろそれ以外の選択肢はないという程だ。
 一度高熱を出した状態で、身体を引きずるかのような状態でも会った為、周囲が物凄く心配性になってしまった程だ。お陰でカラルス関係に関してだけは、侍女達が私の体調をいつも以上に観察するという程に。
 そして……まだ、あの女とは出会っていない。
 あの女は学園に入ってから出会ったから……。

「お嬢様!?」

 思わず震えた身体をルアは見逃さず、焦ったかのような声を出した。
 小さい声で大丈夫よ……と呟きながらも、もう少しだけゆっくりさせてと願い出ると、ルアはまた来ますと部屋を出て行った。
 ……連行されている時の、あの女がしていたニヤついた顔を思い出して、思わず鳥肌がたった。
 これから処刑されるという私に、嬉しそうな顔をしていた不気味さと恐怖。

「本当に巻き戻ったという事かしら……それとも、現実じみた夢か……」

 そう呟きながら、私は思い出す。というか、カラルスに関しての事は忘れない。
 学園に入る前、カラルスが訪ねてきた日に起こる事が同じか確認をするのだ。
しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。

hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。 義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。 そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。 そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。 一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。 ざまあの回には★がついています。

もう、今更です

ねむたん
恋愛
伯爵令嬢セリーヌ・ド・リヴィエールは、公爵家長男アラン・ド・モントレイユと婚約していたが、成長するにつれて彼の態度は冷たくなり、次第に孤独を感じるようになる。学園生活ではアランが王子フェリクスに付き従い、王子の「真実の愛」とされるリリア・エヴァレットを囲む騒動が広がり、セリーヌはさらに心を痛める。 やがて、リヴィエール伯爵家はアランの態度に業を煮やし、婚約解消を申し出る。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

処理中です...