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39.お父様が引っ越してきました
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「アルロス帝国とディスタ国の国力差を考えた上に、仕掛けてきたのはディスタ国の方だ。こちらの要望を一方的に叩きつけただけだ。通らない方がおかしい。ブラッドリー公爵もいることだしな」
当たり前だと言うようにティン様は答える。
その書簡と共にアーサー様とマルチダ様はディスタ国へ送り返したと。素直に従ったのか疑問もあるが、暴れるようなら問答無用で縛り付けていてもおかしくないかもしれない…。
「勿論、皇帝陛下の言い分が通るように後押しはしましたよ。国王は顔を真っ青にしており、そのまま倒れてしまいましたので処理は楽でした」
サラリと父が爆弾発言を落とした気がする。が、何の問題もないとでも言うような表情で語る父に、そういうものかとすら思えてしまう自分がいる。
「こちらで処刑をして、リアの負担になる事は勿論、万が一にでもリアの悪い噂が流れるような事は困るからな」
「後の面倒事は全部、無能な国王が引き受ければ良いのです。愚王と愚息しか居ないとは嘆かわしい」
「お父様……?」
悪い微笑みを携え、あまりに不敬な言い方に少し驚いてお父様を見る。
そんな私の表情に気がついたのか、父はにっこり笑い、ティン様が私へとしっかり視線を向け、身体の方向も少し傾けた。
「ブラッドリー公爵は賠償の一つとしてディスタ国から貰い受けた。アルロス帝国では大臣として働いてもらう。爵位は公爵のままだ。リアの父だしな」
あまりの事に驚き目を見開いたまま、父の方を向く。
そこでは満面の微笑みでしっかり私を見つめる父が、しっかりと頷いた。
「「「「お嬢様~!」」」」
皆で引っ越してきたから、と言う父に期待の目を向けると、ティンは分かっていたと言わんばかりに、そのまま父の為に用意した邸へ父と共に向かう事になった。
そこで待っていたのは馴染み深い使用人達だ。
皆涙を浮かべながらも嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。そんな変わらない皆の優しい姿に、私も思わず涙ぐんでしまい、再会の喜びをしっかり堪能した。
「……エリー」
幼い頃から私に仕えていてくれたエリーは、遠くからそんな様子を見ているの留まっていた。
その瞳には喜びは勿論、どこか悲しそうな悔しそうな表情まで読み取れて……どうしてなのかと胸が痛くなる。
そんな私達の交わす視線に気がついたのか、ティン様が父に何かを呟くと、父がエリーを呼んだ。
「エリー!」
「はい、旦那様」
父に近づき、しっかり礼をする様に、さすがだと言う気持ちで見つめる。
その顔はすでに仕事の顔つきで、先ほどまでの感情は見られない。しかし父の次の言葉でエリーの表情は崩れ落ちる。
「お前は今日からリア付きの侍女とする。以前のように頼む」
返事をする前に、一瞬驚いた様子を見せた後、その瞳にどんどん涙が溜まっていく。
「……返事は?」
「は…はい!」
やれやれと言った様子で父がかけた問いかけに、エリーは元気よく返事をしてくれた。
当たり前だと言うようにティン様は答える。
その書簡と共にアーサー様とマルチダ様はディスタ国へ送り返したと。素直に従ったのか疑問もあるが、暴れるようなら問答無用で縛り付けていてもおかしくないかもしれない…。
「勿論、皇帝陛下の言い分が通るように後押しはしましたよ。国王は顔を真っ青にしており、そのまま倒れてしまいましたので処理は楽でした」
サラリと父が爆弾発言を落とした気がする。が、何の問題もないとでも言うような表情で語る父に、そういうものかとすら思えてしまう自分がいる。
「こちらで処刑をして、リアの負担になる事は勿論、万が一にでもリアの悪い噂が流れるような事は困るからな」
「後の面倒事は全部、無能な国王が引き受ければ良いのです。愚王と愚息しか居ないとは嘆かわしい」
「お父様……?」
悪い微笑みを携え、あまりに不敬な言い方に少し驚いてお父様を見る。
そんな私の表情に気がついたのか、父はにっこり笑い、ティン様が私へとしっかり視線を向け、身体の方向も少し傾けた。
「ブラッドリー公爵は賠償の一つとしてディスタ国から貰い受けた。アルロス帝国では大臣として働いてもらう。爵位は公爵のままだ。リアの父だしな」
あまりの事に驚き目を見開いたまま、父の方を向く。
そこでは満面の微笑みでしっかり私を見つめる父が、しっかりと頷いた。
「「「「お嬢様~!」」」」
皆で引っ越してきたから、と言う父に期待の目を向けると、ティンは分かっていたと言わんばかりに、そのまま父の為に用意した邸へ父と共に向かう事になった。
そこで待っていたのは馴染み深い使用人達だ。
皆涙を浮かべながらも嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。そんな変わらない皆の優しい姿に、私も思わず涙ぐんでしまい、再会の喜びをしっかり堪能した。
「……エリー」
幼い頃から私に仕えていてくれたエリーは、遠くからそんな様子を見ているの留まっていた。
その瞳には喜びは勿論、どこか悲しそうな悔しそうな表情まで読み取れて……どうしてなのかと胸が痛くなる。
そんな私達の交わす視線に気がついたのか、ティン様が父に何かを呟くと、父がエリーを呼んだ。
「エリー!」
「はい、旦那様」
父に近づき、しっかり礼をする様に、さすがだと言う気持ちで見つめる。
その顔はすでに仕事の顔つきで、先ほどまでの感情は見られない。しかし父の次の言葉でエリーの表情は崩れ落ちる。
「お前は今日からリア付きの侍女とする。以前のように頼む」
返事をする前に、一瞬驚いた様子を見せた後、その瞳にどんどん涙が溜まっていく。
「……返事は?」
「は…はい!」
やれやれと言った様子で父がかけた問いかけに、エリーは元気よく返事をしてくれた。
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