【完結】婚約破棄された私は昔の約束と共に溺愛される

かずきりり

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38.使者はお父様でした

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ウォーリア大公閣下は、パルロア様を修道院へ送ったと噂で聞いた。
隣国の公爵令嬢を害した罪は思いが、パルロア様自身も公爵令嬢であり、私は無事だという事もあるが国交問題になりかねなかったという点から処刑や追放という声もあったが、それは私としても望んでいない。
そこで、周囲に何もない北の寒い地方に、とても厳しい生活が強いられる大罪を犯した人が入る修道院が
あるとの事で、そこに入る事になった。
そしてパルロア様は一人娘であったが、王家の血筋でもあるという事で、ウォーリア大公閣下は後継を探すというわけでもなく、自分の代で終わりにすると宣言された。

ウォーリア公爵家で一体どのような話し合いがあったかは分からない。
ただ事実をそのまま聞いただけだった。分かる事と言えば、皆誰かを愛していたということだけ。



そして、処罰を受けるのはパルロア様だけではない。

「この度は大変申し訳ございませんでした」

あれから数日たち、今は謁見の間。
何故か私はティンの隣、皇后の椅子に座らされ、目の前に居るディスタ国の使者と対峙しているのだ。
そしてその相手が……

「ブラッドリー公爵…」
「お父様…」

ため息のように呟かれた名前。ティンも私も、呆れた顔をしているに違いない。
目の前に居る父は、謝罪にきたとは思えない程の笑顔を私達に向けている。
が、私達の呆れるような声を聞いて、表情を引き締めると次の言葉を放った。

「リアが皇帝陛下の隣に、皇后陛下のように座っているのに幸せを感じました。二人の思いを知っているからこそ、まずその喜びが出てしまいました」

そう良い、頭を下げる。

「しかしながら、リアが危険な目にあったとの事。帝国にいることで安心し、きちんと監視できていなかった事を悔やまれます。皇帝陛下にも手をかけさせてしまいました」

とても私事のような気がする内容だけれど…
悔しそうにしているだろう父を尻目に、ティンに目をやるが、その表情からは何も読み取れない。
さすが皇帝陛下。何の情報も感情も表情に出さないように訓練されている。
が、私と視線を合わせると、その表情を和らげさせる。

「ブラッドリー公爵は、確かにディスタ国では公爵で宰相かもしれないが、何よりもリアの父という一個人の人間だ」

その言葉に胸が熱くなる。
公爵で、宰相で。
でも何より私の父で。
愛されているのも大事にされているのも分かっていたけれど、それを目の当たりにされた気がする。
貴族だからとか、そういう権力や地位などではなく、ただ父として、喜び、悔やむ。
知っている。それだけじゃない重く尊い愛情を、より深く知り胸を打たれ、目頭が熱くなる。

「リアの悪いようにはなっていないから安心してほしい」
「大丈夫だリア。向こうの国王とはきっちり話をつけたからな」

感動に打ち震えて、人と人の繋がりに改めて感謝をしていると、二人からそんな声が聞こえた。
……どうして過去形なのだろう?
使者を使っての往復時間を考えても、現在進行形の話ではないのだろうか。という疑問が頭をよぎった。
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