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37.パルロア様の行い

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五歳の時、大好きだったジャスティンが突然消えた。城の中が大騒ぎだったような記憶はある。
変わりにジャスティンの義兄だという人がしつこいくらい私の相手をしようとしたけれど、私はジャスティンが良かった。
ジャスティンを邪険にしてきた人が一体今更私に何の用だと言うのだろうか。
しばらくして戻ってきてからは、父がジャスティンと夜中会っていたりした事も知っていたし、ジャスティンが影ながら努力をしているのも知っていた。
王妃や第一王子に対してもやり返していくジャスティンを、私はもっと好きになった。
それから月日は流れ、ジャスティンが皇帝となった。私はずっとずっと見てきた。

皇帝になったとなれば周囲は態度を変えてきたし、そんなジャスティンに少しでも近づく女はメイドですら牽制した。
それに対してジャスティンは何も言わなかったから、ジャスティンも私の事がきっと好きなのだろうと思った。
父も相変わらずジャスティンに近く、側に寄り添い支えている。きっと父の力が大きいところもあるだろう。
ジャスティンと一緒になれるのは私だと、確信していたのに————

ただ、ジャスティンは一人の存在しか見ていなかったなんて





「………っ!」

騎士からの報告を受けたウォーリア公爵閣下は、床に手をついたまま、全身震わせていた。
微かに歯を食いしばったかのような音が聞こえる。

パルロア様はウォーリアという家名を最大限に使い、更に父が自分を溺愛しているというのを逆手に取っていたのだろう。
アーサー様やマルチダ様と接触し、仲良くなる上で、自分の出入りを騎士たちに他言無用と告げる。
特に問題を起こしてもいないのであれば、自分達はディスタ国の二人が出ないよう監視するだけなので、わざわざ報告する必要もないと思ったのも理解が出来る。
アルロス帝国の誰かが接触をすると思わず、そう命じたのはウォーリア大公閣下だ。
その上、騎士や二人を上手く使い、私を襲わせる。
睡眠薬を入れたのもパルロア様だという証拠も掴んでいるらしい。この短時間でそこまで突き止めるとは、本当にアルロス帝国に仕える人達は有能だ。
そして…パルロア様も。
ただ、その手腕をふるうのは国の為、民の為だろう。
私を陥れる事ではない。
いくら能力があれども、肝心のそこを間違えていてはいけない…が、パルロア様の努力は分かる気がする。
ティンの事が好きで好きで、その隣に並び立つ為に学んだのではないだろうか。
手段と方法が間違えてなければ、人を操る様は、皇后として引けを取らないものだったのではないだろうか。

私がそんな事を考えていたのが表情に出たのか、ティンが私の腰を強く抱き寄せた。
ティンは私の事を気にしつつも、目の前に跪く人物に強い視線を向けている。
信頼をしていただろう、ステファン・ディ・ウォーリア。
叔父でもあり、仲がいいと言える唯一の血縁者ではないだろうか。

「………娘に。パルロアに厳しい処罰を与えます」

食いしばった唇の端からは血が滲み、泣くのを耐えたのか目は赤くなっているが、その顔つきは父ではなく、臣下として厳しいものだった。
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