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30.助けてください
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睡眠薬———
そう言われ、まさかと思う反面、自分の具合にピッタリ当てはまる事が分かる。
きっと眠る程ではない少量なのだろう。眠いけれど眠れないような。
油断した。
今の状況が良くない事は痛感している。あまりの悔しさについ唇を噛み締めた。
「ロザリアが表情を崩すのは珍しいな。そんなに悔しいか」
アーサー様が歪んだ笑みを見せながら、ドレスの裾から手を入れ太腿をまさぐる。
「何を!?」
思わず声を張り上げ、突き放そうと腕に力を入れアーサー様の胸を押すが、ビクともしない。
「まだ皇帝と婚姻式も上げていないという事は、お前はまだただの客人であって婚約者にもなっていないのだろう?あの皇帝は昔からお前を目にかけていたというではないか」
昔から……?
昔……私が忘れている約束……?
思わず胸が痛む。
「そんな奴から奪うのであれば、いっそ子を宿してもらうのが一番手っ取り早い」
何という事を考えつくのだろう、この人は。
思わず血の気が引く。
この人は……駄目だ。色々な意味で駄目だ。
人としても、王太子としても……。最悪でしかない。
「な…にを……」
「やり直そうと言っている。お前を妻に迎える」
「っ!王族に嫁ぐ条件を知らないのですか!?」
そう言っている間にドレスの裾は捲り上げられ、胸元もはだけさせられている。
「伯爵家の令嬢だろう?」
だから何だと言わんばかりに答えるアーサー様が、その手を離す事はない。
王族に嫁ぐ条件はそれだけではないのに!
「純潔である事も条件です!」
逃げる為でもあるが、事実でもある。
王族以外の血を入れるわけにはいかない。
純潔である事を条件に迎え、その後は限られた男性としか会う事はないし、二人っきりなんて以ての外なのである。
上位貴族にも当てはめられるが、王族に関しては厳しい制限や監視が施される。
どうして王太子でもあるアーサー様が知らないのか!
これが…ディスタ国の王太子なのか……
悔しさや悲しさに胸が押しつぶされそうになる。
その言葉を聞いたアーサー様の手は止まり、唖然とした表情を見せた後に悔しそうな表情をしながら睨みつけ、私の上から退く事なく、その腰に刺してある剣に手をかける。
「ちっ。ならばその顔に傷をつけてやれば皇帝も諦めるだろう」
「な…にを……」
思わず息を呑む。
「それとも腕を切り落としてやろうか。僕は構わないよ。王太子の地位を確固たるものにするためのお飾りの妃なんだから」
「っ!」
必死に抵抗を試みるが、アーサー様はびくともしない。
それどころか、そんな私を見て狂気を宿した瞳で笑っている。
「あんまり暴れると、間違って殺してしまうかもしれないから、やめてほしいんだけど」
「……!」
真剣な声で発せられた言葉に、背筋が凍る。
こんなアーサー様なんて知らない……そして、こんな状況に陥った事もない。
思わず暴れる事も忘れて、このまま意識を失ってしまいたい衝動に駆られる……
誰か…
誰か助けて………
そう言われ、まさかと思う反面、自分の具合にピッタリ当てはまる事が分かる。
きっと眠る程ではない少量なのだろう。眠いけれど眠れないような。
油断した。
今の状況が良くない事は痛感している。あまりの悔しさについ唇を噛み締めた。
「ロザリアが表情を崩すのは珍しいな。そんなに悔しいか」
アーサー様が歪んだ笑みを見せながら、ドレスの裾から手を入れ太腿をまさぐる。
「何を!?」
思わず声を張り上げ、突き放そうと腕に力を入れアーサー様の胸を押すが、ビクともしない。
「まだ皇帝と婚姻式も上げていないという事は、お前はまだただの客人であって婚約者にもなっていないのだろう?あの皇帝は昔からお前を目にかけていたというではないか」
昔から……?
昔……私が忘れている約束……?
思わず胸が痛む。
「そんな奴から奪うのであれば、いっそ子を宿してもらうのが一番手っ取り早い」
何という事を考えつくのだろう、この人は。
思わず血の気が引く。
この人は……駄目だ。色々な意味で駄目だ。
人としても、王太子としても……。最悪でしかない。
「な…にを……」
「やり直そうと言っている。お前を妻に迎える」
「っ!王族に嫁ぐ条件を知らないのですか!?」
そう言っている間にドレスの裾は捲り上げられ、胸元もはだけさせられている。
「伯爵家の令嬢だろう?」
だから何だと言わんばかりに答えるアーサー様が、その手を離す事はない。
王族に嫁ぐ条件はそれだけではないのに!
「純潔である事も条件です!」
逃げる為でもあるが、事実でもある。
王族以外の血を入れるわけにはいかない。
純潔である事を条件に迎え、その後は限られた男性としか会う事はないし、二人っきりなんて以ての外なのである。
上位貴族にも当てはめられるが、王族に関しては厳しい制限や監視が施される。
どうして王太子でもあるアーサー様が知らないのか!
これが…ディスタ国の王太子なのか……
悔しさや悲しさに胸が押しつぶされそうになる。
その言葉を聞いたアーサー様の手は止まり、唖然とした表情を見せた後に悔しそうな表情をしながら睨みつけ、私の上から退く事なく、その腰に刺してある剣に手をかける。
「ちっ。ならばその顔に傷をつけてやれば皇帝も諦めるだろう」
「な…にを……」
思わず息を呑む。
「それとも腕を切り落としてやろうか。僕は構わないよ。王太子の地位を確固たるものにするためのお飾りの妃なんだから」
「っ!」
必死に抵抗を試みるが、アーサー様はびくともしない。
それどころか、そんな私を見て狂気を宿した瞳で笑っている。
「あんまり暴れると、間違って殺してしまうかもしれないから、やめてほしいんだけど」
「……!」
真剣な声で発せられた言葉に、背筋が凍る。
こんなアーサー様なんて知らない……そして、こんな状況に陥った事もない。
思わず暴れる事も忘れて、このまま意識を失ってしまいたい衝動に駆られる……
誰か…
誰か助けて………
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