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22.色々と理解できない状況かもしれません
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「どうして友達じゃないなんて、ひどい事を言うんですか…」
小さく震えて、目に涙を浮かべるマルチダ様は庇護欲を掻き立てられるのかもしれない。と今現状、目に見えるものだけを見ていれば思える。
そしてその瞳がティン様に向けられている事に対し、どうしようもなく胸が苦しく、えぐられる思いが駆け巡る。
「皇帝陛下!ロザリア様はこういうお方です。不興をかっておりませんか?」
「そうだな。ロザリア、国へ帰ろう。お前なんかが皇帝陛下の側にいる事が間違っている」
「皇帝陛下は何か騙されているのかもしれません!」
口々に言いたい事を言ってくれるアーサー様とマルチダ様に呆れる思いをするが、不安にも襲われている。
こんな情けない自分をティン様に見られていると思うと、どうしようもなく胸が苦しい。
どうして私はこんなにも……
貴族教育のおかげで、表情は変わらず、二人をただ毅然と見つめている私は周囲の目には一体どう映るのだろうか。
なんて思っていると、ティン様が私の肩を抱き寄せた。
「何を言っているのか理解できないな。俺はあの卒業パーティの場にいたんだが?」
一瞬アーサー様は言葉に詰まるも、マルチダ様は言い淀むことなく更に続ける。
「なら、ロザリア様がどんな方なのかご存知の筈です!離れてください!あたしは皇帝陛下を心配してるだけです!」
「そんな相手と友達だと?」
「あたしは心が広いですから!ロザリア様のした事を許しますよ!ほら、ロザリア様!帰りましょう」
嘲笑うようなティン様に対し、よく分からない持論を繰り広げるマルチダ様。
あれだけの事があれば当人同士の許す許さないの口頭だけで終わる問題でもない。
ティン様に抱き寄せられているだけで、幾分か心が穏やかになってきた反面、マルチダ様が言葉を紡ぐ分だけ、ティン様から冷ややかなオーラが漂ってきているようで、そちらの方が気になってきてしまった。
騎士様方が殺気を感じるとよく言われている状況は、こういう感じなのかもしれません。
目に見えるわけではないけれど、何かを感じる。
「リアは私の側で療養中だ。気にしないでくれ」
ティン様はそう言うと私の髪に口づける。
「「っ!」」
アーサー様とマルチダ様は息を呑み、一瞬だけその顔を思いっきり歪ませた。
「何より今はリアを口説いている最中だしな。邪魔はするな」
二人の目の前でそんな事を言われて少しパニックになってしまい、顔に出さないようにするのが精一杯になってしまう。
いくら貴族教育を受けていると言っても、顔の赤みは隠せないんじゃないか。
「話がそれだけなら失礼する。今日は遅いし城に客室を用意させよう」
そう言ってティン様は立つと私に手を差し伸べてくれたので、羞恥心を振り払いながらもその手をとって一緒に退室しようと立つ。
その際にチラリと二人を見ると、憎悪を宿した目で射殺さんと言わんばかりに睨みつけられているのが見えた。
一体、何だというのだろう。
その冷たい目線に背筋が凍りそうになった。
小さく震えて、目に涙を浮かべるマルチダ様は庇護欲を掻き立てられるのかもしれない。と今現状、目に見えるものだけを見ていれば思える。
そしてその瞳がティン様に向けられている事に対し、どうしようもなく胸が苦しく、えぐられる思いが駆け巡る。
「皇帝陛下!ロザリア様はこういうお方です。不興をかっておりませんか?」
「そうだな。ロザリア、国へ帰ろう。お前なんかが皇帝陛下の側にいる事が間違っている」
「皇帝陛下は何か騙されているのかもしれません!」
口々に言いたい事を言ってくれるアーサー様とマルチダ様に呆れる思いをするが、不安にも襲われている。
こんな情けない自分をティン様に見られていると思うと、どうしようもなく胸が苦しい。
どうして私はこんなにも……
貴族教育のおかげで、表情は変わらず、二人をただ毅然と見つめている私は周囲の目には一体どう映るのだろうか。
なんて思っていると、ティン様が私の肩を抱き寄せた。
「何を言っているのか理解できないな。俺はあの卒業パーティの場にいたんだが?」
一瞬アーサー様は言葉に詰まるも、マルチダ様は言い淀むことなく更に続ける。
「なら、ロザリア様がどんな方なのかご存知の筈です!離れてください!あたしは皇帝陛下を心配してるだけです!」
「そんな相手と友達だと?」
「あたしは心が広いですから!ロザリア様のした事を許しますよ!ほら、ロザリア様!帰りましょう」
嘲笑うようなティン様に対し、よく分からない持論を繰り広げるマルチダ様。
あれだけの事があれば当人同士の許す許さないの口頭だけで終わる問題でもない。
ティン様に抱き寄せられているだけで、幾分か心が穏やかになってきた反面、マルチダ様が言葉を紡ぐ分だけ、ティン様から冷ややかなオーラが漂ってきているようで、そちらの方が気になってきてしまった。
騎士様方が殺気を感じるとよく言われている状況は、こういう感じなのかもしれません。
目に見えるわけではないけれど、何かを感じる。
「リアは私の側で療養中だ。気にしないでくれ」
ティン様はそう言うと私の髪に口づける。
「「っ!」」
アーサー様とマルチダ様は息を呑み、一瞬だけその顔を思いっきり歪ませた。
「何より今はリアを口説いている最中だしな。邪魔はするな」
二人の目の前でそんな事を言われて少しパニックになってしまい、顔に出さないようにするのが精一杯になってしまう。
いくら貴族教育を受けていると言っても、顔の赤みは隠せないんじゃないか。
「話がそれだけなら失礼する。今日は遅いし城に客室を用意させよう」
そう言ってティン様は立つと私に手を差し伸べてくれたので、羞恥心を振り払いながらもその手をとって一緒に退室しようと立つ。
その際にチラリと二人を見ると、憎悪を宿した目で射殺さんと言わんばかりに睨みつけられているのが見えた。
一体、何だというのだろう。
その冷たい目線に背筋が凍りそうになった。
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