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17.side-あたしは推しを攻略したい
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「マルチダ、お茶でもどうだい」
「アーサー!」
ノックの音と共に、アーサー様の声が聞こえて、マルチダは勢いよくドアを開けた。
そんなマルチダにはしたないと注意する声はなく、マルチダについている侍女も、アーサーについている護衛も、侮蔑の表情を少しだけ見せる。
「もうこんな牢獄のような生活は嫌だよ~!ずっと勉強勉強で、ほぼ軟禁状態だもん!」
そう言ってアーサーに寄りかかる。
早くあたしを助け出して!
それに……
「ねぇ!帝国へ行きたいわ!皇帝陛下が心配だもの!なんでロザリア様なんか……早く助けないと!」
ジャスティンに会いたい。会って攻略したい。
あたしの最推しだもの!悪役令嬢の事を何故ジャスティンが助け出したのかも気になるし!
アーサーの腕にしがみついて、必死で訴えるが、アーサーは視線を彷徨わせているだけだった。
いつもの強気な力強さがない。
「マルチダ…帝国へ行くなんてそう簡単な事ではないよ……それよりもまずは勉強を頑張って欲しい」
「頑張ってるわよ!!」
更に頑張れというアーサーに対し、苛立ちを募らせた。
頑張っても頑張っても進まなくて、課題だけが溜まっていく。
アーサーとお茶をする時くらいしか休めなくて、これ以上どうしろと言うのか。
「そんな事より!また炊き出しでも行いましょうよ!勉強も大事だけれど、民の方が大事でしょう?」
前世では炊き出しが行われていた事があるため、卒業パーティの後に行った事がある。
人は食べなければ死んでしまうため、大盛況だった。
王太子とその婚約者として、顔見せにもなれば良いと思ったし、実際評判の為というのもある。
何故か卒業パーティ以来、周囲から遠巻きにされるのだ。貴族だけでなく執事や侍女までもから。
「いや…それは……」
アーサーはまたもハッキリ答えない。
俯いて何かを考えているようにも見える。
「ねぇ!」
上手く行かない攻略に苛立ちながらも、アーサーの腕に更に密着するように身体を摺り寄せる。
ゲームの中では存分に甘やかしてくれた、お兄さんタイプのアーサーは、今じゃただの頼りない弟みたいに思えてくる。
こんなはずじゃなかったのに…
あたしが攻略したアーサーってこんな人だったの?
がっかりした気持ちになりつつ、ジャスティンを攻略する為にもアーサーは必須なので、しばらくは一緒に居なければ…。
一人で帝国になんて行けないし、馬車で行くにもお金がかかる…。
自分の評判を戻す事とジャスティンを攻略する事を考えていると、ノックの音が聞こえる。
侍女が対応してくれ、こちらを向いて言った。
「国王陛下がお二人をお呼びです」
「え?結婚式の事かな?」
呼ばれる理由が全く思い浮かばず、あるとすればアーサー関連の事だろう。まさか結婚式?せっかくジャスティンに会えたのに!
内心焦るあたしは、隣で真っ青になりながら震えるアーサーに全く気が付く事もなく、謁見室へ一緒に向かうのだった。
「アーサー!」
ノックの音と共に、アーサー様の声が聞こえて、マルチダは勢いよくドアを開けた。
そんなマルチダにはしたないと注意する声はなく、マルチダについている侍女も、アーサーについている護衛も、侮蔑の表情を少しだけ見せる。
「もうこんな牢獄のような生活は嫌だよ~!ずっと勉強勉強で、ほぼ軟禁状態だもん!」
そう言ってアーサーに寄りかかる。
早くあたしを助け出して!
それに……
「ねぇ!帝国へ行きたいわ!皇帝陛下が心配だもの!なんでロザリア様なんか……早く助けないと!」
ジャスティンに会いたい。会って攻略したい。
あたしの最推しだもの!悪役令嬢の事を何故ジャスティンが助け出したのかも気になるし!
アーサーの腕にしがみついて、必死で訴えるが、アーサーは視線を彷徨わせているだけだった。
いつもの強気な力強さがない。
「マルチダ…帝国へ行くなんてそう簡単な事ではないよ……それよりもまずは勉強を頑張って欲しい」
「頑張ってるわよ!!」
更に頑張れというアーサーに対し、苛立ちを募らせた。
頑張っても頑張っても進まなくて、課題だけが溜まっていく。
アーサーとお茶をする時くらいしか休めなくて、これ以上どうしろと言うのか。
「そんな事より!また炊き出しでも行いましょうよ!勉強も大事だけれど、民の方が大事でしょう?」
前世では炊き出しが行われていた事があるため、卒業パーティの後に行った事がある。
人は食べなければ死んでしまうため、大盛況だった。
王太子とその婚約者として、顔見せにもなれば良いと思ったし、実際評判の為というのもある。
何故か卒業パーティ以来、周囲から遠巻きにされるのだ。貴族だけでなく執事や侍女までもから。
「いや…それは……」
アーサーはまたもハッキリ答えない。
俯いて何かを考えているようにも見える。
「ねぇ!」
上手く行かない攻略に苛立ちながらも、アーサーの腕に更に密着するように身体を摺り寄せる。
ゲームの中では存分に甘やかしてくれた、お兄さんタイプのアーサーは、今じゃただの頼りない弟みたいに思えてくる。
こんなはずじゃなかったのに…
あたしが攻略したアーサーってこんな人だったの?
がっかりした気持ちになりつつ、ジャスティンを攻略する為にもアーサーは必須なので、しばらくは一緒に居なければ…。
一人で帝国になんて行けないし、馬車で行くにもお金がかかる…。
自分の評判を戻す事とジャスティンを攻略する事を考えていると、ノックの音が聞こえる。
侍女が対応してくれ、こちらを向いて言った。
「国王陛下がお二人をお呼びです」
「え?結婚式の事かな?」
呼ばれる理由が全く思い浮かばず、あるとすればアーサー関連の事だろう。まさか結婚式?せっかくジャスティンに会えたのに!
内心焦るあたしは、隣で真っ青になりながら震えるアーサーに全く気が付く事もなく、謁見室へ一緒に向かうのだった。
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