【完結】婚約破棄された私は昔の約束と共に溺愛される

かずきりり

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14.贈り物をいただきました

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ティン様の独占欲丸だしな買い物に更に喜んでいて気がつかなかった。
散財させていたという事実に——
ランチに入った店の個室で我に返り、その現実を直視してしまい落ち込んでしまった心を見透かしたかのように、ティン様が微笑む。

「忘れてるのか?俺はリアに求婚してるんだ。当たり前に受け取ってほしい」
「そう言われましても…」
「それも男の甲斐性だろう」

返事もしておらず、現在私とティン様の関係はアルロス帝国に療養を兼ねて滞在しているディスタ国の公爵令嬢でしかなく、しかも王太子殿下に婚約破棄を言い渡された傷者令嬢でもある。しかしティン様にそう言われてしまうと無下にも出来ない。
申し訳なさの中には確かに喜びという気持ちもあり、もどかしくも気恥ずかしい気持ちにもなる。

「笑顔でありがとうと言ってくれれば、それで良い。ただそれが見たいが為の自己満足だ」

食前酒を傾けながら笑うティン様に言われ、少し肩の力も抜ける。
確かに贈り物と言うのは相手に喜んで欲しいという見返りを求めたものだな、と納得した部分もあるのだ。

「ありがとうございます」

素直に喜ぶ事にして、贈られた物を思い浮かべると自然に微笑みが出た。
そんな私を見て、ティン様は驚いたような表情になった後、顔を少し赤くして微笑んだ。少したりとも私を見逃したくないとでもいうように。
そして出てきた料理を見ては、どの食材が使われているのかという説明と共にアルロス帝国でしか取れないという作物も使われており、その味に舌鼓を打ちながら楽しんで食事をした。

雑貨店を見てアルロス帝国特有の雑貨をいくつか購入した後、お菓子でも買って城でお茶にしようかと言う話になったのだが、通りに大きな噴水がある広場を目にし、そこへ行きたいと伝えた。
噴水を中心に円状の大きな広場にはいくつかの露天が出ていたのだ。
貴族特有のお店も良いけれど、平民に向けたものにも少し興味を持った。パッと見ただけでもディスタ王国より平民の暮らしも良さそうで、売っているものも可愛く見劣りしないような物ばかりだったのだ。

「飲み物を買ってくる。ここで待っていてくれ」

馬車で入ってこれない為、少しだけ歩き噴水近くのベンチに座る。ここならば周囲を見渡し何があるのか一望でき、気になる店にだけ行けば良い。
ティン様が飲み物を買ってきてくれる間に何処へ行こうか視線を彷徨わせる。色んな露天があり、ついつい目移りしてしまいそうだ。

「本当、第二王子様様だよなぁ~」
「あぁ、あのまま第一王子が皇帝陛下になってたらどうなってたか」
「第二王子が皇帝陛下になってくれたおかげで、俺らの暮らしも豊かになったな!」

近くで昼間からビール片手に喋っている男達の声が聞こえる。ティン様の事だろうか?そう思うと、つい聞き耳を立ててしまう。
まぁ、そんな事をしなくても自然と聞こえてくる距離と音量なのだが、意識してその声を拾おうとしてしまうのだ。
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