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03.冤罪で婚約破棄されました
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周囲から笑い声が聞こえる。もう隠そうという気もないのだろう。
嘲笑うような見下した笑い声。
視界が揺らぐような感覚がする中、踏ん張って前を見据える。
「…どういう事ですか?」
「はっ!お前のような奴を王家に迎え入れられるか!」
「この婚約は王命で結ばれているものです。私が王家に迎えられるのは国王陛下の意思です。」
背筋を伸ばし、アーサー様の瞳をしっかり見つめる。
私は人に背を向けなけれならない事などしていない。
例え、不安や寂しさ、悲しみに襲われていようとも。今は手元にある扇で口元を隠すのが私の精一杯の盾である心の防御でもある。
手が震えてるのを悟られないように。
「どうだかな。お前みたいな傲慢な令嬢が王太子妃になんてなろうものなら他の貴族達が反発するだろう!」
傲慢?
誰とも関わる事もなく、勉強に勤しんでいた私が傲慢なのだろうか。
それとも、誰とも関わっていなかったからだろうか。
気が付けば孤立していた私だが、それ自体が傲慢だったせいだと言いたいのか。
しかし原因に心当たりなんてない。
俯きそうになるも、歯を食いしばって目線を上げたまま何事もないように振舞う。
「エルガー男爵令嬢のマルチダ嬢を平民上がりだと馬鹿にし、常に見下した態度で嫌がらせをしていたそうじゃないか」
「私はそんな事しておりません!」
「こちらには証言者も居るのだ!下位貴族には高圧的に命令し、服に隠れる場所を殴ったり、物を壊したり!マルチダ嬢に至っては噴水に突き落としたりもしたそうじゃないか!」
「そんな!私はそんな事しておりません!王太子殿下!きちんとお調べください!」
冤罪だ。
私は家名に泥を塗るような真似はしないし、人様に背を向けなければならないような事もしていないし、そもそもそんな事はしていない。
そして何より…私は公爵令嬢のあり方を考え、ずっと勉学に励んでいたのだ。
「王太子殿下。しっかりとお調べ下さい。証言だけではなく証拠をご提示下さいませ」
「証言だけで十分だろう!おい!誰かコイツが無罪だという証言出来る奴はいるか!?」
血の気が引く。
ずっと私は孤立していたのだ。しているともしていないとも、誰も見ていない。
周囲はそんな私の内心を知ってるのかと言いたい程、嘲笑う声が聞こえる。
悪女、傲慢、我儘。そんな言葉が私の耳に飛び込んで来る。
思わず周囲に目を向けると、さくら色のふわふわウェーブの髪をして、アーサー様の色であるイエロードレスを纏う女性が目に付いた。
—マルチダ・エルガーだ—
私と視線が合うと、分かりやすく怯え、震えている。
………どうして………
「ロザリア嬢!視線を下げろ!マルチダ嬢が怯えているではないか!」
アーサー様はそう怒鳴り、マルチダ様の所へ向かうとマルチダ様を引き寄せ、自分の胸に抱き抱えた。
「王太子殿下!」
「煩い!」
男女の距離が近すぎる!
何て破廉恥な!そう思い、注意をするのも臣下の役目と声を出すが、遮られてしまう…。
嘲笑うような見下した笑い声。
視界が揺らぐような感覚がする中、踏ん張って前を見据える。
「…どういう事ですか?」
「はっ!お前のような奴を王家に迎え入れられるか!」
「この婚約は王命で結ばれているものです。私が王家に迎えられるのは国王陛下の意思です。」
背筋を伸ばし、アーサー様の瞳をしっかり見つめる。
私は人に背を向けなけれならない事などしていない。
例え、不安や寂しさ、悲しみに襲われていようとも。今は手元にある扇で口元を隠すのが私の精一杯の盾である心の防御でもある。
手が震えてるのを悟られないように。
「どうだかな。お前みたいな傲慢な令嬢が王太子妃になんてなろうものなら他の貴族達が反発するだろう!」
傲慢?
誰とも関わる事もなく、勉強に勤しんでいた私が傲慢なのだろうか。
それとも、誰とも関わっていなかったからだろうか。
気が付けば孤立していた私だが、それ自体が傲慢だったせいだと言いたいのか。
しかし原因に心当たりなんてない。
俯きそうになるも、歯を食いしばって目線を上げたまま何事もないように振舞う。
「エルガー男爵令嬢のマルチダ嬢を平民上がりだと馬鹿にし、常に見下した態度で嫌がらせをしていたそうじゃないか」
「私はそんな事しておりません!」
「こちらには証言者も居るのだ!下位貴族には高圧的に命令し、服に隠れる場所を殴ったり、物を壊したり!マルチダ嬢に至っては噴水に突き落としたりもしたそうじゃないか!」
「そんな!私はそんな事しておりません!王太子殿下!きちんとお調べください!」
冤罪だ。
私は家名に泥を塗るような真似はしないし、人様に背を向けなければならないような事もしていないし、そもそもそんな事はしていない。
そして何より…私は公爵令嬢のあり方を考え、ずっと勉学に励んでいたのだ。
「王太子殿下。しっかりとお調べ下さい。証言だけではなく証拠をご提示下さいませ」
「証言だけで十分だろう!おい!誰かコイツが無罪だという証言出来る奴はいるか!?」
血の気が引く。
ずっと私は孤立していたのだ。しているともしていないとも、誰も見ていない。
周囲はそんな私の内心を知ってるのかと言いたい程、嘲笑う声が聞こえる。
悪女、傲慢、我儘。そんな言葉が私の耳に飛び込んで来る。
思わず周囲に目を向けると、さくら色のふわふわウェーブの髪をして、アーサー様の色であるイエロードレスを纏う女性が目に付いた。
—マルチダ・エルガーだ—
私と視線が合うと、分かりやすく怯え、震えている。
………どうして………
「ロザリア嬢!視線を下げろ!マルチダ嬢が怯えているではないか!」
アーサー様はそう怒鳴り、マルチダ様の所へ向かうとマルチダ様を引き寄せ、自分の胸に抱き抱えた。
「王太子殿下!」
「煩い!」
男女の距離が近すぎる!
何て破廉恥な!そう思い、注意をするのも臣下の役目と声を出すが、遮られてしまう…。
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