【完結】冤罪で処刑されたので復讐します。好きで聖女になったわけじゃない

かずきりり

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 ……だけれど、私は、まだ死ぬ運命ではなかった。
 生を全うしていないのだ。だって、処刑されたのだから。
 いきなり寿命を絶たれたようなものだ。

 ――だからこそ……今の聖獣は、まだ寿命が残っている。

 それが僅か数十年とはいえ。
 私は、そんな事まで全て見通せるようになっていた。私が本来持っていた寿命の残りは五十年程あった事までも、それこそ神のように知っている。
 未知の力とでも言うのだろうか。しかし、驚きはない。だって、知っているのは知っているのだから。何故知っているのと言われても、それこそ分からないとしか言いようがない感覚。
 驚きもなく、ただ淡々と知っているから、で全てを受け入れられている。

『可哀そうに』

 そんな言葉と共に、聖獣はふわふわとした尻尾で私を包み込んだ。
 ふと上を見上げれば、聖獣の目からは涙が溢れている。

『なんて酷い事を……』

 私の受けた仕打ちに対してだろう。
 聖獣なのだから知っていて当然だ。私の生きて来た様を見守っていただろう。
 美しく涙を流す聖獣は、どれほど国を思って守って来たのだろう。
 だけれど、私は違う。

「私は守らない。復讐してやる」

 見ていたなら分かっている筈だ。
 私がどれほど恨み、死んでいったかを。
 どれだけの絶望を与えられたのかを。
 言うなれば、死んでからも家族には会えないのだ。……聖女として、聖獣になったから。人間とは違う死後の世界だ。
 私は、聖女として無理やり神殿に連れていかれた時が、家族と会える本当に最後の時だったのだ。
 私の首は晒しものにされ、死体は王都の郊外へ打ち捨てられ、家族とは身体さえも別々にされた事を知っている。聖獣の力で分かっているのだ。
 憎悪を抱き続け復讐を決意する私を、聖獣は止める事もしなければ、頷く事もしない。
 ただ悲しそうな瞳を私に向けるだけだ。

『私は一体、何を守っていたのか……』

 ポツリと聖獣から零れ落ちた言葉。
 そのまま聖獣は私を尻尾で包みながらも、涙を流し続けた。

 ――何もない楽園。

 それが聖獣の住まう場所。
 ただ時間が過ぎていくだけ。
 国の事は頭の中で流れるように理解でき、知りたいと思えば知る事も出来る。そして、恩恵を与え続けるのだが、聖獣は嘆き悲しみ涙を流し続け……果てに、悲しみの末に衰弱死した。
 これも、本来与えられた寿命ではない。そして、私が次の聖獣となる。
 けれど、私は恩恵なんて与えない。与えるのは復讐の滅びだ。
 前の聖獣が残した恩恵は、これから徐々に減り、私の憎悪が国に降り積もりだろう。

 ――許さない。
 ――絶対に、許さない。

 あの国を。国に住まう全ての人間を。
 私のたった一つの望みすら奪った、あいつらを!
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