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苦しそうな、辛そうな慎司の声色。
私でさえも未だにロイさんの事を整理しきれていないのだ。いくら慎司だって、今日明日では整理がつかないだろう。
私は静かに頷いた後、帰り支度を始めたが、慎司は何も言わずにそっぽ向いたままだ。
流石に、このまま一緒には居られない。一晩過ごすとか、お互いに気まずすぎる。
「またな」
ホテルから出る時にかけられた言葉。
その、または何時になるのか分からないけれど。
「またね」
次がある事を願って、私も言葉を返して家に帰った。
――これで、私は身の置き場がなくなった。
もうネットゲームに逃げる事なんて出来ないし、気分転換に会ってくれる人も居ない。
リアルにそんな知り合いは居ないし、そもそも友人が居ない。
「あーあ……」
全てを自分で手放した。
後悔はしていないけれど、それに似た感覚が私の心に重くのしかかった。
◇
『しぃさん大丈夫~?』
『ゲームしよう! 付き合うよ!』
『いや、シンに悪いし……』
『シン坊ならソロでやるだろ! あいつは強い! 大丈夫!』
『私が悪いのに、シンが仲間外れとか申し訳なさすぎ……』
『女子会だと思えばシンさんも納得するよ~! 今までもあったじゃん』
全てを二人に報告した後でも、特に変わらない関係性。相変わらず二人には心配をかけているけれど、いつもの四人組ではいられなくなっていたし、私もゲームへログインするのを躊躇っていた。
会えば気まずいだろうし、シンもしばらく時間が欲しいと言っていたのだから、私には待つしか出来ない。
『ごめんね……流石に無理だよ』
私がそう送れば、二人はそれ以上に誘ってくる事はなかった。
いつもならゲームで楽しみ笑っていた時間。
静かすぎる部屋に、心細さを感じる。ゲームをしていないだけで、いつもと同じ自分の部屋だと言うのに。
時間をどう潰そうかなんて思いながら、無駄にブックマークを漁っていれば、以前までやっていたゲームが目についた。
ロイさんをブロックしてから、ログインする事のなくなったゲーム。
ロイさんだけでなく、シンやあすやん、りっぷ達とも出会えた場所。
忘れる為に遠ざかっていたゲームにアクセスする。新しく始めたゲームから遠のいて、古いゲームへとログインしている自分に苦笑しながら、目の前に広がるゲーム画面が懐かしい昔の心を呼び起こしていく。
「三ヵ月ぶりか」
新しいエリアでも出ているのだろうかと、運営からのお知らせを知らせるボックスを開けば、新規DMの通知があった。
私でさえも未だにロイさんの事を整理しきれていないのだ。いくら慎司だって、今日明日では整理がつかないだろう。
私は静かに頷いた後、帰り支度を始めたが、慎司は何も言わずにそっぽ向いたままだ。
流石に、このまま一緒には居られない。一晩過ごすとか、お互いに気まずすぎる。
「またな」
ホテルから出る時にかけられた言葉。
その、または何時になるのか分からないけれど。
「またね」
次がある事を願って、私も言葉を返して家に帰った。
――これで、私は身の置き場がなくなった。
もうネットゲームに逃げる事なんて出来ないし、気分転換に会ってくれる人も居ない。
リアルにそんな知り合いは居ないし、そもそも友人が居ない。
「あーあ……」
全てを自分で手放した。
後悔はしていないけれど、それに似た感覚が私の心に重くのしかかった。
◇
『しぃさん大丈夫~?』
『ゲームしよう! 付き合うよ!』
『いや、シンに悪いし……』
『シン坊ならソロでやるだろ! あいつは強い! 大丈夫!』
『私が悪いのに、シンが仲間外れとか申し訳なさすぎ……』
『女子会だと思えばシンさんも納得するよ~! 今までもあったじゃん』
全てを二人に報告した後でも、特に変わらない関係性。相変わらず二人には心配をかけているけれど、いつもの四人組ではいられなくなっていたし、私もゲームへログインするのを躊躇っていた。
会えば気まずいだろうし、シンもしばらく時間が欲しいと言っていたのだから、私には待つしか出来ない。
『ごめんね……流石に無理だよ』
私がそう送れば、二人はそれ以上に誘ってくる事はなかった。
いつもならゲームで楽しみ笑っていた時間。
静かすぎる部屋に、心細さを感じる。ゲームをしていないだけで、いつもと同じ自分の部屋だと言うのに。
時間をどう潰そうかなんて思いながら、無駄にブックマークを漁っていれば、以前までやっていたゲームが目についた。
ロイさんをブロックしてから、ログインする事のなくなったゲーム。
ロイさんだけでなく、シンやあすやん、りっぷ達とも出会えた場所。
忘れる為に遠ざかっていたゲームにアクセスする。新しく始めたゲームから遠のいて、古いゲームへとログインしている自分に苦笑しながら、目の前に広がるゲーム画面が懐かしい昔の心を呼び起こしていく。
「三ヵ月ぶりか」
新しいエリアでも出ているのだろうかと、運営からのお知らせを知らせるボックスを開けば、新規DMの通知があった。
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