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「折角だし、美味しいもの食べたいからな~。よし、神社行くか!」
私の案を組んでくれて、二人で神社まで足を運び、お参りをする。どうやらここは開運や厄除けといった効果があるようだ。
ふとロイさんの事を思い出して、切なくなった。
ロイさんの事を忘れ、新たな道を行っている私にはピッタリじゃないかと自分を奮い立たせて、しっかりと祈る。そんな私を少し心配そうな目で慎司が見ている事に気が付き、笑顔を返す。
「よし! 食うぞー!」
「待ってましたー!」
気分を一転させて、食べ物に気を反らす。そんな私に慎司も乗っかってくれたように感じたが、そもそも慎司のお目当ては最初から食べ物だ。
お互い笑い合いながら、出店が並んでいる所を歩いて、目当てのものを買い、シェアしながら食べ歩く。
慎司と居る時間は楽しく、気が付けば日も落ちてきたので、観光地を後にして帰路へつく。しっかり、自分用のお土産を買う事も忘れてはいない。
「食い意地、張ってるなー」
「慎司こそ」
「これは職場へのお土産」
大量に買われたお土産を掲げて言われれば、返す言葉もない。確かに男所帯な職場であれば、それなりに量は欲しいのだろう。
「何か負けた気がする」
「これって勝ち負けあるのか!?」
そんなふざけた会話をしながら三時間かけて、私達は主要駅についた。
「ここからは大丈夫だから。慎司も明日は仕事でしょ? 遅くなるし」
「いや、送る。危ない」
どうしても引かない慎司に、最寄り駅まで送ってもらう事になった。申し訳なさもあるけれど、少し嬉しくもある。
「あーあ、もうついちゃった」
ポツリと零れた私の言葉に、慎司の動きが一瞬止まり、その後に長い溜息が聞こえた。
「あのな。そんな事言うと、勘違いする奴が出て来るぞ?」
俺のように、と小さな声で呟いた慎司に、ハッとして顔を上げる。嬉しそうに、しかしどことなく悲しそうな瞳をする慎司に、胸が痛む。
「あ……のね」
「ん?」
緊張して、喉に何かが詰まっているかのように、声が出しにくい。けれど、そんな私をじっと待ってくれる慎司の優しさに、私も勇気を持って口を開く。
「ちゃんと、慎司との事を真剣に考えて向き合ってるから。じゃあ! 今日はありがとう!」
一気に言い終えると、慎司の返事を待つことなく、私は家に向かって駆けだす。慎司の顔をまともに見る事も出来ないどころか、もう恥ずかしくて顔を合わせていられなかったのだ。
家に帰って落ち着いてからスマホを開けば、慎司からのメッセージが届いていた。
『楽しかった。ありがとう。次はどこ行く?』
早くも次のデートに誘うのかと思って、笑みが込み上げてきた。気恥ずかしさと、嬉しさの反面、ロイさんへの恋心を思い出しては胸も痛む。
「早く忘れられれば良いのに……」
辛く悲しい思いなんて、全てなくなってしまえば良いのにと願いながら、私は次のお出かけを考えて心を楽しませた。
私の案を組んでくれて、二人で神社まで足を運び、お参りをする。どうやらここは開運や厄除けといった効果があるようだ。
ふとロイさんの事を思い出して、切なくなった。
ロイさんの事を忘れ、新たな道を行っている私にはピッタリじゃないかと自分を奮い立たせて、しっかりと祈る。そんな私を少し心配そうな目で慎司が見ている事に気が付き、笑顔を返す。
「よし! 食うぞー!」
「待ってましたー!」
気分を一転させて、食べ物に気を反らす。そんな私に慎司も乗っかってくれたように感じたが、そもそも慎司のお目当ては最初から食べ物だ。
お互い笑い合いながら、出店が並んでいる所を歩いて、目当てのものを買い、シェアしながら食べ歩く。
慎司と居る時間は楽しく、気が付けば日も落ちてきたので、観光地を後にして帰路へつく。しっかり、自分用のお土産を買う事も忘れてはいない。
「食い意地、張ってるなー」
「慎司こそ」
「これは職場へのお土産」
大量に買われたお土産を掲げて言われれば、返す言葉もない。確かに男所帯な職場であれば、それなりに量は欲しいのだろう。
「何か負けた気がする」
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そんなふざけた会話をしながら三時間かけて、私達は主要駅についた。
「ここからは大丈夫だから。慎司も明日は仕事でしょ? 遅くなるし」
「いや、送る。危ない」
どうしても引かない慎司に、最寄り駅まで送ってもらう事になった。申し訳なさもあるけれど、少し嬉しくもある。
「あーあ、もうついちゃった」
ポツリと零れた私の言葉に、慎司の動きが一瞬止まり、その後に長い溜息が聞こえた。
「あのな。そんな事言うと、勘違いする奴が出て来るぞ?」
俺のように、と小さな声で呟いた慎司に、ハッとして顔を上げる。嬉しそうに、しかしどことなく悲しそうな瞳をする慎司に、胸が痛む。
「あ……のね」
「ん?」
緊張して、喉に何かが詰まっているかのように、声が出しにくい。けれど、そんな私をじっと待ってくれる慎司の優しさに、私も勇気を持って口を開く。
「ちゃんと、慎司との事を真剣に考えて向き合ってるから。じゃあ! 今日はありがとう!」
一気に言い終えると、慎司の返事を待つことなく、私は家に向かって駆けだす。慎司の顔をまともに見る事も出来ないどころか、もう恥ずかしくて顔を合わせていられなかったのだ。
家に帰って落ち着いてからスマホを開けば、慎司からのメッセージが届いていた。
『楽しかった。ありがとう。次はどこ行く?』
早くも次のデートに誘うのかと思って、笑みが込み上げてきた。気恥ずかしさと、嬉しさの反面、ロイさんへの恋心を思い出しては胸も痛む。
「早く忘れられれば良いのに……」
辛く悲しい思いなんて、全てなくなってしまえば良いのにと願いながら、私は次のお出かけを考えて心を楽しませた。
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