【完結】ネットゲームで知り合った配信者に恋をした

かずきりり

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『楽しんでるかー!? イチャついてるー!?』
『あっつあつラブラブデートしてるー!?』

 あすやんとりっぷが、ほぼ同時に送信している事と内容に、思わず苦笑する。
 自分のスマホを取り出して操作をする。

『めっちゃくちゃ楽しんでます!』

 私の送った内容に、シンは驚いたように目を見開いて此方を見た後、軽く微笑んでくれた。

「事実だから」
「それは光栄な事で」
「後でペンギン!」
「……楽しいねぇ、水族館はねぇ」

 シンは呆れたような棒読みをしながらも、それでも詩帆が楽しいなら良いかと呟いていた。本当に優しくて面倒見が良い人だと、思わずシンの幸せを願ってしまう。
 その反面、何故自分はこんなにも不幸なのだと言う気持ちも沸き起こる。
 そんな気持ちを押し殺し、私はめいっぱいイルカショーを楽しんだ後、ペンギンを堪能し、クラゲのコーナーへ行く。
 ゆらゆら漂い、行く当てのない様は、まるで私の心のようだ。

「大丈夫か……?」
「……うん」

 ボーッと眺めていれば、シンが心配そうに声をかけてきた。けれど、笑い返す気力もなく、ただ小さく頷く。
 そんな私にシンは頭をポンポンと撫でるかのように手を置いた後、表情を一変させた。

「飯行こう! もぉ腹減った!」

 話題を変えるかのように、ふざけて言うシンに、私もふざけて返す。

「あ、刺身!?」
「肉って言ったろ!」

 言って、シンは私の手を握ると、水族館を出て近くにあるレストランへ向かった。

『シン坊なら安心できる。まぁ、しぃの気持ち次第だけど』
『正直、ロイナルさんよりシンさんの方が、しぃさんには合ってると思う』

 個別に送られてきたメッセージ。けれど、二人共同じような事を言っている。
 第三者からは、そう見えるのかと、ボーッとして画面を見ていれば、シンが声をかけてきた。

「どうした?」
「ううん、何でもないよ。ただ、個別に揶揄われただけ」
「あいつら暇か」

 レストランで食事をとった後、港にある公園を散歩する。
 波の音と潮の匂いに心が洗われるようだ。それでも、なかなか落ちない位に、私の心は色んな感情がどす黒く巡っている。

「甘いスイーツでも食いに行くか!」
「賛成~!」

 私の気分が落ち込んでいるのが、すぐにわかるのか。シンは毎回タイミング良く違う所へ連れて行ってくれる。もしくは、それだけ私が分かりやすいという事なのかもしれないけれど。
 シンは、暗くなる前に帰れるようにと私の最寄り駅近くのカフェを提案してくれた。そんな細かい所にも気が付くなんて、と感動する。
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