【完結】ネットゲームで知り合った配信者に恋をした

かずきりり

文字の大きさ
上 下
33 / 57

33

しおりを挟む
「俺でいいのか…?」

「うん!フェアンじゃなきゃだめなんだ!」

そう言ったアリンの目はもう泣いてなどなく決意に満ち溢れ光り輝いていた。

「わかった。一緒に行こう。どこまでも一緒だ!」

2人は微笑み合いどちらからともなく優しくキスをした。

アリンが気持ちを伝えてくれた。もう俺だけ秘密にしておくわけにはいかない。

初めは可愛いアリンに嫌われたくない、もう少し一緒にいたいという気持ちだけだった。でもそれが共に過ごすようになり、幸せな事も辛い事も分かち合う中で一生そばにいたいと思うようになった。

ーー伝えよう。自分がルシュテン王国の王子だということを。
そして、この日に共に生きてくれるようアリンへの永遠の愛を誓おう。


ーーー



「う~…蒸し暑いね、まだ6月になったばかりなのに…」

ノスティアからデリアへ向かう道のりは山道を通る。6月と言う事もあり道中は木々が生い茂り湿気で汗が体に張り付いた。アリンを俺の前に座らせて馬で移動しているが、猫獣人は人間よりも体温が高いからかアリンは見るからに辛そうで休ませならなければいけないのは一目瞭然だった。

「アリン、一度休もう。」

「ごめんね、僕、他の猫獣人より暑いの弱いみたいで…」

「気にしなくていいさ。まだ時間はあるから休みなさい。ほら水を飲んで…。」

木陰にアリンを下ろしあらかじめ用意しておいた水筒をアリンに渡した。そして自分のカバンからタオルを取り出すとアリンへ告げた。

「アリン、タオルを川で絞ってくるから少し待っててくれるか?冷やした方がいいから…」

「えっ…そこまでしなくていいよ!」

「ダメだ!少し冷やそう、な?」

「う、うん…ありがとう!」

照れるアリンの頭を優しく撫でると近くの小川に向かった。

「ここでいいか…」

サラサラと流れる川にタオルを浸しぎゅっと硬く絞る。そのままタオルを近くの岩に置くとアリンが自分を見ていないかを確認し、ポケットに手を入れた。

ーー1週間ではこれしか用意できなかったが…。

フェアンの掌には木でできた小箱があり中にはシルバーの細いリングが入っていた。

なんの変哲もないただのシルバーリングだが、宝石屋などないノスティアでは、買えるのはこれが限界だった。しかし裏側には永遠の愛を表す『etarnal love』の文字が彫ってあり、それはフェアンが店主にお願いし自分で刻印したものだった。

小箱をもう一度ポケットに大事にしまうと、タオル片手にアリンの元へ走った。
急いで戻るとそよそよと優しい風が流れる中アリンは気持ちよさそうに木にもたれかかり眠っていた。

「アリン…?冷たいタオルだよ。」

「ん…?気持ちいい…。…あれ、僕眠っちゃってた?」

「暑かったからな、疲れたんだろう。もう大丈夫か?」

「うん…!後少しだし大丈夫!」

水分をとって少し眠ったおかげか顔色が良くなったアリンの額をタオルで拭いた。
その後アリン自分の前に座らせ馬の手綱を持つと目的の場所まで向かった。

しばらく歩くと、どうやらアリンの様子がおかしい。肩が小刻みに震え、血の気が引いているように見えた。

「フェアン…。こ、この場所なんだ…。」

ただの森のように見えるが、よく見るとその場所だけには木が生えておらずそこで何があったのかは容易に想像がついた。
アリンは5年前の光景が忘れられないのだろう。ただでさえ白い顔が真っ白になり涙が止めどなく溢れている。

「アリン…大丈夫か?」

「ぐずっ…ふっ……だ、大丈夫。フェアン、馬から…降ろして?」

「わかった。」

馬から降ろすとアリンはよたよたと事故のあった場所に座り込み叫ぶように泣いた。

「おと、さん…おかあさ…ん!ごめん、ごめんね。今まで来れなくて…。痛かったよね、怖かったよねっ…。ずっと来れなくてごめんね…」

まるで幼い子供のように泣くアリンの姿は見ている方も心を痛めた。




しおりを挟む
ツギクルバナー

あなたにおすすめの小説

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

2月31日 ~少しずれている世界~

希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった 4年に一度やってくる2月29日の誕生日。 日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。 でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。 私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。 翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。

一目惚れ、そして…

詩織
恋愛
完璧な一目惚れ。 綺麗な目、綺麗な顔に心を奪われてしまった。 一緒にいればいるほど離れたくなくなる。でも…

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

処理中です...