【完結】ネットゲームで知り合った配信者に恋をした

かずきりり

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 例え現実に手が伸びなくても、ゲームの中で面倒ごとに巻き込まれたくない。
 正直言えば、面倒ごとは現実だけで良いと思っている。
 ネットはネットの中として楽しみたいのだ。

『ロイさんファンの人達が、好きと連呼しているのを邪魔するのも悪いかと(笑)』

 冗談めいて返すけれど、そういう思いがあるのも本当だ。けれど、邪魔をしたいという悪い私も居たりはする。

『放っておけばいいのに』
『ロイさんに迷惑かかってもいけないので~』

 ファン同士の諍い、揉め事。配信者に飛び火する事だってあるだろう。
 面倒事に巻き込まれるのが嫌というのも本心だけれど、ロイさんがしたい事をするのも私にとって大切な事だ。
 私は私の気持ちを押し殺す。絶対に知られてはいけないと。
 ロイさんとの関係を変えたくない。ファンの人達に知られて、ロイさんの活動を邪魔したくない。
 密かに思うだけにしよう。隠れて配信を眺めるだけだ。

『別にしぃなら良いよ。しぃは特別だから』

 決意した瞬間、揺らぐような言葉が送られてきた。

 ――特別。

 その言葉に動揺して、頭が働かない。
 きっと、冗談だ。冗談に決まっていると、私自身を落ち着かせて返事を考えていれば、更にメッセージが入ってくる。

『会ってみたい』
『私、不細工なので(笑)』

 断りたいけど断るという事も出来ず、わけの分からない返事をした後、思いっきり後悔する。
 いや、でも容姿に関しては人それぞれの好みがあるわけで。ロイさんから見れば私なんて生理的に嫌悪する顔つきかもしれない!

『関係ないでしょ(笑)』
『そんな簡単に会ってどうするの? 私がハゲデブ加齢臭のおっさんだったりするかもよ?』

 自分自身に何を言っているのだと突っ込みを入れたい程、意味不明な返しをしてしまった自覚はあるけれど、もう止められない。

『それでもゲーム話題は楽しく出来そうだし、気が合いそうなのには間違いないでしょ(笑)』

 いっそロイさんの方から断って欲しいという気持ちもあったのだけれど、嬉しい言葉だけが返ってくる。

『ロイさんって、女性の容姿より内面重視?』

 素朴な疑問だった。
 どんな人が来ても良いと言うのであれば、異性に対してもそうなのかと。何か言われたら、そう誤魔化せる道もあると思って、送った。

『理想と現実は違うからなぁ。言うなれば細身で綺麗系かな?』
『ハードルたっか!』
『元カノ、モデルだった(笑)』

 笑えない。全く笑えない。
 何、その情報。
 私から聞いた事とはいえ、聞きたくなかったという後悔が押し寄せた。

『現実的な話に思えない私は夢の世界へ旅立ちます(笑)』
『おやすみ(笑)』

 朝起きたら綺麗になっていれば良いのにと願いながら、私はベッドへ潜り込んで悲しみに浸った。
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