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13.くすぶっていた感情

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迎え?誰が?あぁ、両親が……そうか、娘を大事にする親を演じたいが為か。自分達の名声の為ね。

「マリア……?」

一気に表情がなくなった事は、自分でも分かっている。そんな私を心配するかのようにシヴァは私の顔を覗き込むが、思い出したくもない過去が走馬灯のように頭を駆け巡るのを止められない。
心が冷えていくのと同じように身体も冷えていくようで、ついシヴァの服をギュと掴む。

「……祠で暴れてるみたいだね……どうしようか……」

シヴァは神様としてどんな力があるのだろうか。
神様として不可思議な力を持っているのだろうか。それを見た事はない。分かる事といえば、祠から此処へ移動してきた陣くらいだ。
私はシヴァはシヴァとして好きだから、それを尋ねるのも違う気がした。
ただ穏便に解決するにしても、シヴァではなく自分が赴くべきなのではないだろうか……

「……行く……私がちゃんと話してくる」
「……無理しちゃ駄目だよ?僕も一緒に行くから」

それ以上何を言うわけでもなく、お互いが強く手を握り、陣へと移動する。



「マリア!マリア!!どこに居る!!!」
「マリア!どこなの!?」
「落ち着いて下さい!!」

父と母だと思われる声と、それを止める人の声。
多分護衛騎士達だろう。こんな所へ貴族が護衛もなしに来るわけもない。そもそも道のりも険しいのだ。

「やめて下さい!神の居住区とされる場所ですよ!」
「黙れ!勝手に娘を生贄にした分際で!」
「あぁあああ!!マリアー!!!」

どうやら聖騎士の人達も居るのだろう。見張りや道案内としての意味もありそうだ。
祭壇の影に現れた私達だが、罵声は祠の外から聞こえる。
目を開けて祠の中を見渡すと、祭壇が倒されているのが分かる。どうやら両親が私を探すために暴れたのだろう。
シヴァに目をやると、苦笑しているのが分かった。

「……ごめんなさい?」
「形あるものは、いつか壊れるよ」

ただ、こんな事は初めてだから、とシヴァは付け足して言った。
暴れられた事自体には怒ってないけれども、暴れられた事がないからこそ戸惑っている部分もあるのだろう。確かに身寄りがない娘ならば誰もこんな風に迎えに来なかっただろう事は理解できる。
そして、私も戸惑っている。
今まで放置していたのに、私の事に気がつきもしないのに。何をしているんだと、怒りの感情が湧き上がってきた。
穏やかな日々で落ち着いていたと思っていたのだけれど、怒りの感情は燻ったまま心の奥底で眠っていたのだろう。両親の声を聞いた事により、燃え上がったこの気持ちを、私はぶつける事に決めた。
ずっと……ずっと穏やかに、心乱される事なくシヴァと暮らす為に。
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