【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり

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11.シヴァ

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神に死は存在しない。

長い長い年月の中、気が付けば生贄として放り出されている娘が居る事に気がついた。
そのまま野垂れ死なれても気分が良くないしと思い、暇つぶしのように保護をした。
人間と接して、人間のような生活をし、色んな事を教えてもらい、生活の場を整えた。
永遠にある時間の中、一瞬と言える時間だけの娯楽だけど、とても楽しかった。だから気がついたんだ、自分がとても寂しかった事に。
気が付けば、次はいつ来るのか。それが楽しみになっていた。

そして来たマリアという子は、ある意味とても変わっていた。
今までは孤児や平民といった身分の子達だったが、マリアは貴族だと言う。つまり人間の中では高貴とされる身分になるのだろう。
ツンとすました、誰かに媚びる事のない視線。
一緒に居てくれないかもしれないと少し不安になったけど、一緒に来てくれると言った。
これまでの娘達は恐怖や安堵の念が入り混ざっていたのに対し、どこか違うマリアに面白さを見出した。

毎日の生活は今まで以上に楽しかった。
今までの人間は、やはり神が相手だと畏怖の念があったようで、どこか一線おかれていたのもあるだろう。
これまでは手伝う程度の事しかしてこなかったけど、マリアは何も出来ない。
教えて、一緒に行う。
マリアは何事にも一生懸命で、更に笑い、怒り、驚き、悲しみ……色んな表情を覗かせるようになった。
今日はどんな表情を見せてくれるのだろうか。日々そんな楽しみに胸を躍らせた。
こんな気持ちは初めてだった。

ある日、森の中で怪我をしている獣を見つけた。
弱肉強食も自然の摂理、捨て置くか食べるのか、どちらを選択するのだろうと思ったら、意外な行動に出た。

「大変!」

そう言って近づいて、何とか手当しようとする。
自分に牙を向けて唸っている獣相手に。
このままではマリアが怪我をしかねないと、手当を手伝い、獣を森へ帰した後に聞いた。

「だって……生きようとしていたし……?」
「疑問形?」
「食べようと思って捕まえたわけでもないし……生きるために頂くと決めた命じゃないし……?助けるのは当たり前……?」

色々と疑問形で返してきてはいるけれど、無駄に命を狩る事もしなければ、自然と助ける行動に出たのだろう。
綺麗だな……
そう思ったら、自分の中に特別な感情が芽生えているのに気がついた。
……けれど。
寿命ある人間と神とでは、未来なんてないのだ。
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