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06.祠に入りました

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社があるという山の麓に付くと、そこから神輿のようなものに移動をし聖騎士達に担がれた。
山頂までの道のりはとても良いものではなく、結構揺られたが、こんなものを担ぎながら登るなんて大変だろうな、なんて他人事のような事も考えていた。
百年に一度の周期といえど、この人達も大変だと思い声をかける。

たどり着いた場所には小さな滝があり美しい自然に囲まれているような場所だった。
小さな祠が滝の側にあり、そこへ一緒に運ばれた果物や野菜と共に入る。
普段は食物等を捧げるのは神殿で行っているそうだ。
進んで他の貢物と共に祠へ入る様を心配そうな、悲しそうな、そして怪訝そうな顔で見られている。

「それでは、私達はこれで失礼いたします」

深く一礼をする神官の顔に迷いが見える。

「ありがとうございます」

その迷いを吹きとばせと言わんばかりに、私は淑女教育でほどこされた仮面である満面の笑みでお礼を言った。





「さて、どうしようかな」

一応、神への貢物である以上、ここから直ぐに出ていくのもどうかと思い、しばらくゆっくり考えていた。
そもそも生贄だ。最悪の事を想像していないわけではないが、家から出られたというのは喜ばしい事でもある。
持ってきたカバンも祠の中にあるし、しばらくは此処にある果物でも食べていれば凌げる。
どれほど此処に留まっていれば良いとも言っていなかったけれど、明日くらいには出て行っても良いのではないのだろうか。
そしてその後はどこか遠い辺境にでも行って見つからないように暮らそうかな、なんて楽しんでいる自分がいる。
所詮家出感覚の冒険気分かもしれないし、一人で生きていくという事を知らないからこそ危機感がないのかもしれない。
それでも自由を手にしている事に高揚感が高まる。ドレスも宝石もないけれど、自分の意思だけはしっかりとあるのだ。
日が暮れ始めたのか、祠の中が薄暗くなり始めて気が付く。

「あ、もうこんな時間なのね」

少しお腹もすいてきたので、祭壇のような場所に置かれた林檎を、そのまま齧る。
マナーに煩い貴族の生活から抜け出した事で平民のようにそのまま丸齧りして食べている事に、心のどこかに楽しさを覚えながら、食べ進める。
もう、する事もないし寝てしまおうかなと、そのまま床に転がる。
ベッドもなく、柔らかいシーツもない。それでも不便と言う事もなく、新しい体験に戸惑いと楽しみがあるようで眠れそうにない。
ゴロリと祭壇の方へ寝返りをうつと、人の足らしきものが眼前にあった。

「……え?」

目線を上にあげると、白い衣を身にまとい、白に近い金色の髪と目をした青年が、こちらをジッと見ていた。
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