【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり

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05.整理して出ます

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三日後に向けて、私は準備をする。
と言っても、心残りを整理するというわけではない。新しい門出に向けての準備だ。
神殿から帰って来た私は、侍女に孤児院で行われるバザーの日程を確認するように言い、明日は一日片付けに専念する事にした。





「マリア、何をしているの?」
「まぁ!勿体ない!まだ使えるのに!」
「どうするの!?こんなに新しいものを買う余裕なんてうちにはないわよ?」

翌日、朝から自分の部屋を整理している私に姉は付きまとい、こちらが返事をしなくとも気にせず次々と言葉を放ってくる。
私が一言も発していない事に気がついていないのだろう。片付けをしている先から色々物色しては何か言っているが、そんな姉をスルーして服から装飾品から全て仕分けをしていく。
もう戻らないからこそ、必要のないもの。
寄付できるものは寄付しようと思うし、宝石等は念の為、持っていけるものだけは持って行こうと思う。
服も身軽なワンピースのようなものを一着だけでも持っていけば良いだろう。煌びやかなものは全部要らない。
そもそも、この部屋にも私のものだと思えるものなんて何一つないのだ。全ては姉のものだったもの。
地味で目立たない部屋で着るようなワンピースは助かるし、何かあった時に売るとしても高価な宝石はなく、そこら辺でも気楽に売れると良いなと思える宝石ばかりだ。

「マリア!聞いてるの!?」
「そろそろお茶会に向かう時間ではありませんか?」
「あら……本当ね、行ってくるわ!」

そう言って姉はもう私の事など気にせず、楽しそうにお茶会へ出かけて行った。
服から装飾品からほぼ全てをバザーに出してという私に侍女は心配そうに焦り、オロオロとしている。
その様子に罪悪感が湧き上がった私は、バザーに出すという私の意思を一筆書いたものを用意しておき、侍女には気が変わるかもしれないからすぐにではなくて良いと伝えた。
そして色や柄別に仕分けした状態でクローゼットに戻すように頼んだ。





翌日、神官と聖騎士達が迎えに来る。
邸中がざわめき、家令を初め使用人達が驚いているのが分かる。

「私は神への貢物となる事に決めました。今までお世話になりました」

使用人達を前にそう言って一礼する。
昨日私が持ち物を全てバザーに出してくれと伝えた侍女が理由を察して真っ青になって倒れ、近くに居た者が抱き抱えていた。
今私が持っているのはカバン一つのみ。

「何を言っているの!?マリア!?」

発狂して暴れ泣き叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。

「お父様とお母様の許可はあるの!?」

両親の許可はないが、私の意思のみで行けるのだ。
神への貢物と言えば、ある意味名誉的な事ではないか。
叫ぶ姉の声に一切反応せず、後ろを振り返る事もなく、私は馬車に乗り込み邸を後にした。
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