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「おっはよー! ともっち!」
「どうだった?」
「どうなった?」

 学校へ行けば、東さん達が寄ってきてくれる。
 今まで誰も私に話しかけすらしなかったのに、だいぶ違った世界になった。
 ただ静かに教科書を広げていた私は居ない。
 私は三人に向かって笑顔でピースをすれば、三人も同じように満面の笑みになってくれた。

「え! 詳しく!」

 東さんの声で、私は連Pさんと会って話した内容や、親との話し合いも伝えた。
 驚いたり、納得し、悲しそうにしたり……皆、私の言葉を真剣に聞いてくれているのが分かる。
 言葉のキャッチボールとは、よく言ったものだ。それでどうなった!? そんな事が……等の言葉が返ってきたりするだけで、話す方の気持ちがこんなにも違うのだ。

「そっかぁ~。お母さんも色々思う所があったんだねー」
「流石、人生の先輩という事だね」
「曲はまだ来ないという事だよね? 結構楽しみにしていたんだけれど……特にMV」

 東さんと紺野さんは毒親と思っていた母の方を考えていたようだが、さすがは羽柴さん。自分がやっているMV方面が気になるらしい。

「あ、貰ったよ~! 聞く? MVはまだだけど」
「「「聞く!」」」

 最後を変えて挑戦してみると言った佐々木さんだったけれど、曲はすぐ送られてきた。
 どうやらすぐ閃いたそうで、音声合成ソフトで歌と曲を入れたものを送ってくれたのだ。ただ、MVの変更は間に合わなかったそうだけれど。

 ~♪

 不協和音が鳴り響き、皆がその音に集中していると、無機質な機械の声で歌が乗る。
 暗く、昏く。
 絶望が広がるような歌詞は、相反するようなアップテンポな歌声で奏でられる。
 韻を踏みながら綴られる歌詞は、混沌とした中を彷徨うように……だけれど、最後は……。

「え、何!?」
「パンドラの箱みたいな?」
「え……気になる」

 まるで物語のように、想像を掻き立てられる希望を見つけて終わった。それも、いきなり。

「これをどう歌うか……でも、すぐにでも歌ってみたい」

 まだ定まっていないけれど、とりあえず歌いたい。色々な歌い方をしてみたい。
 希望……私にとって、今はこの歌が希望だろう。

「とりあえずスマホで歌う?」
「そうしてみるつもり」

 まずはスマホに曲を入れて、それに歌声を乗せて定めていくつもりだ。

「今後は設備の問題も出そうだね~」
「お母さんとは話し合ったの?」
「パソコンは買ってくれるみたいだけれど、機材とかは自分で買いなさいって。バイトもして良いって」
「やったね!」

 私の言葉に、皆も自分の事のように喜んでくれた。
 趣味とはいえ……否、趣味でも続けていきたい。
 今、私は生きていると実感出来ているのだ。
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