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……もしかして、母もそういう事を言いたかったのか? なんて僅かな希望というか考えが浮かぶ。
勉強というたった1つの事だったけれど、大学へ進学するという事は、また選択肢を広げる何かがあるかもしれないのだ。
「成功出来るのは、数多く居る中の、ほんの一握りだけだよ。……俺も一応システムエンジニアを目指していたし。在宅で仕事出来るように」
佐々木さんの理由がブレない。
だけれど、それなりの事はしていたのだろう。
他者と関わらないという、たった1つ譲れない事柄の為に、いくつかの選択肢を取って。
「あ、説教臭くなっちゃったね。まぁ好きにすればいいんじゃない?」
「……一度帰って、話してみます……」
話すだけ話したけれど、それを強要するわけではない佐々木さんに安堵しつつ、素直に受け入れようと思えた。
多分、無理やり押さえつけるように言われたら、反発心を抱くんだろうな。抱いてしまうのだろうな。
最後に選ぶのは自分。どうなっても関係ないという、そういうスタンスだからこそ、私は導かれるように答えを出せたのだと思える。
……何のプレッシャーもないから。
「……死んだら全てが終わる」
ポツリと放たれた言葉に驚き、私は目を見開いた。
「終わりに逃げるのか……それとも、やり残した事があると未練を残すか……。救いになるのか絶望になるのか、表裏一体」
まるで歌詞のように佐々木さんは言葉を紡いだ。
確かにそうだ。
昔の私は、いつどうなっても良いような……生きる事に執着をしていなかったと思う。
ただの人形で……自分の意思なんてなく、ただ敷かれたレールの上を歩いていただけ。それは生きていると言えるのか。
だけれど今は……歌いたい。
私は歌いたいのだ。
「人間は面白く……そして怖い」
フッと優しく笑いながら佐々木さんは言う。
私の覚悟や変化が分かったかのように言葉を続けた。
「今なら明るい歌も歌えるんじゃないか?」
「……どうでしょう……」
楽しい歌に感情を込められるのか。
今は楽しい嬉しいと言った感情がよく分かる……けれど、込めるとなれば、どうなるのだろう。
素朴な疑問として私は首を傾げれば、佐々木さんはニヤリと怪しく微笑んだ。
「提供する曲……最後だけ少し変えてみようか」
俺も少し挑戦だなと言い、佐々木さんは伝票を持って席を立った。
「編集を終えたらデータを後日送る。録音環境に関しては、そういう所もあるから教えるよ」
「ありがとうございます」
――提供してもらえる!
佐々木さんの……連Pの挑戦を楽しみにしながら、私も店を出た。
勉強というたった1つの事だったけれど、大学へ進学するという事は、また選択肢を広げる何かがあるかもしれないのだ。
「成功出来るのは、数多く居る中の、ほんの一握りだけだよ。……俺も一応システムエンジニアを目指していたし。在宅で仕事出来るように」
佐々木さんの理由がブレない。
だけれど、それなりの事はしていたのだろう。
他者と関わらないという、たった1つ譲れない事柄の為に、いくつかの選択肢を取って。
「あ、説教臭くなっちゃったね。まぁ好きにすればいいんじゃない?」
「……一度帰って、話してみます……」
話すだけ話したけれど、それを強要するわけではない佐々木さんに安堵しつつ、素直に受け入れようと思えた。
多分、無理やり押さえつけるように言われたら、反発心を抱くんだろうな。抱いてしまうのだろうな。
最後に選ぶのは自分。どうなっても関係ないという、そういうスタンスだからこそ、私は導かれるように答えを出せたのだと思える。
……何のプレッシャーもないから。
「……死んだら全てが終わる」
ポツリと放たれた言葉に驚き、私は目を見開いた。
「終わりに逃げるのか……それとも、やり残した事があると未練を残すか……。救いになるのか絶望になるのか、表裏一体」
まるで歌詞のように佐々木さんは言葉を紡いだ。
確かにそうだ。
昔の私は、いつどうなっても良いような……生きる事に執着をしていなかったと思う。
ただの人形で……自分の意思なんてなく、ただ敷かれたレールの上を歩いていただけ。それは生きていると言えるのか。
だけれど今は……歌いたい。
私は歌いたいのだ。
「人間は面白く……そして怖い」
フッと優しく笑いながら佐々木さんは言う。
私の覚悟や変化が分かったかのように言葉を続けた。
「今なら明るい歌も歌えるんじゃないか?」
「……どうでしょう……」
楽しい歌に感情を込められるのか。
今は楽しい嬉しいと言った感情がよく分かる……けれど、込めるとなれば、どうなるのだろう。
素朴な疑問として私は首を傾げれば、佐々木さんはニヤリと怪しく微笑んだ。
「提供する曲……最後だけ少し変えてみようか」
俺も少し挑戦だなと言い、佐々木さんは伝票を持って席を立った。
「編集を終えたらデータを後日送る。録音環境に関しては、そういう所もあるから教えるよ」
「ありがとうございます」
――提供してもらえる!
佐々木さんの……連Pの挑戦を楽しみにしながら、私も店を出た。
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