上 下
49 / 57

49

しおりを挟む
「……あっ!」
「まさか返事をしてないとか……」
「連絡来てたのに見ていないとか……」

 私の声に、東さんと紺野さんが呆れたように言う。

「一つの事に気を取らすぎてそうだから……」

 溜息を吐きながら羽柴さんまでもが言う。
 確かにそういう所はあるかもしれない、というかあるだろう。今まで「勉強」という一点だけに集中してきていたのだから、いくつかの同時進行は苦手だ。
 これも社会に出た時、出来なくてはいけない事だろうから今のうちに何か自分らしい対策も考えなくてはいけないか。
 いやいや……それよりも……。

「ど……どどどどど……どうしよう……」
「ともっち、どもりすぎー!」

 私の焦りとは裏腹に、東さんはお腹をかかえて爆笑している。

「わ……笑いごとじゃないよー!」

 あまりの事に思わず不満を口に出してしまう。
 けれど、東さんはそれすら笑う。

「別に命の危険なわけじゃないしー。アンチのせいで何か言ってくるなら、それはともっちのせいじゃないし?」

 東さんの言葉が、すんなりと私の心に入って落ち着く。
 確かに……死ぬわけじゃない。
 しかし礼儀を怠ってしまえば、それは私の非にしかならない!
 どういう文面で送れば良いのか迷いながら、私は皆と話しつつ文章を作成していく。

「まさか曲提供を受けるという返事すら、まだしていなかったとは……」
「現状も伝えておいた方が良くない? 火種を嫌う人も居るし」
「自分に飛び火したくないってだけだから、あまりそこは気負わずに」

 誰だって飛び火は嫌だろう。
 折角のチャンスを掴めなくなるのは嫌だけれど……それで他人に迷惑をかけたくない。
 私は正直に、曲の提供を受けたい事。そして今、アンチが湧いて誹謗中傷が行われている事を返事すれば、すぐに返事が返って来た。

「こ……怖っ!」
「貸して貸してー!」

 自分でそのDMを開けない私に、東さんが手を出してくる。
 大人しくスマホを渡すが、東さんの表情を見る勇気もない私は、自分の手で自分の目を覆ってしまう。
 何て返ってきたのか。
 ……連さんまでもが誹謗中傷を真に受けて、酷い言葉を並べ立ててきたりしていないか。人間性を疑われていないか。
 むしろ返事の仕方が良くなかったか。
 今更ながらグルグルと思考が回って恐怖に陥る。

「おぉおお」
「……マジ?」
「誠実……なのかな」

 ……悪い事は書かれてなかった……?
 手をどけて三人の顔を見れば、驚いているような表情だ。

「悪い事は書かれてないよ、大丈夫」

 その言葉に、私も自分のスマホを覗く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~

みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。 ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。 ※この作品は別サイトにも掲載しています。 ※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

井上キャプテン

S.H.L
青春
チームみんなで坊主になる話

ちんぽは射精した

ああああ
青春
運営さん これは青春群像です 不適切ではないです ゆるして

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...