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一方的に私が話しているだけでは何の解決にもならない。
それは分かっているけれど、無視をしているのは明里さんだ。
何かを返してくれればと思いながら、再度口を開こうとした時、バンッ! と戸棚を閉める音と共に、こちらを睨みつける明里さんが見えた。
「ふざけてんの……?」
やっと明里さんが声を放ったかと思えば、憎悪に満ちた震える声。
「こっちは何年かけてやってると思ってるわけ!? ろくに稼げてもないような無名の分際で! 誰のおかげで歌を知って上げられてると思ってんの!? MIXまでしてやってんのにさ!」
言葉の端々に見られる、私への見下し。
明里さんには確かにお世話になっているし、色々教えてもらった。好意に甘えてMIXをしてもらったのも確かだ。でも……そこまで言われる程なのか。そして、ネットを巻き込んで傷つけられる事なのだろうか。
「それは確かに感謝……」
「大体、何の自慢なわけ? 曲提供してもらって私より上にいったとでも言いたかった? 偉そうに言ってんじゃないよ!」
私の言葉を聞く事なく、明里さんは更に言葉を続けた。
最早ただの被害妄想でしかない。
「私はただ……」
「良い子ちゃんぶって、人の手柄でのし上がって? 私は悪くないとか言いたいわけ? 調子のってんな! 生意気なんだよ!」
喜んでもらいたかっただけだ、という言葉は聞いてもらえる事もなく。
無視されて会話にならなかったと思えば、一方的に罵倒される。
恩を仇で返した。
常識を考えろ。
当たり前の事も出来ない。
社会にろくに出る事が出来なくて人間関係すらまともに築けない分際で。
甘ったれで親のすねかじり。
勉強しか誇れないくせに。
学校に行かせてもらってる癖に反抗する子ども。
最早、歌とは関係のない事まで引き合いに出されては、話し合いなんて無理だろうと悟った。
私という人となりを全て否定されてるだけなのだ。
自分自身の感情までもがスッと冷めるのが分かった。
……明里さんに話は通じない。
友達だと……ライバルだと思っていたのは私だけだと悟ってしまったのだ。
――この人は、こうなのだろう。
自分が面倒見ていた、つまり自分より下の相手が出来た。
一緒に楽しんでいるつもりだったけれど、もしかしたら自分より下の相手を作って優越感に浸っていたのかもしれない。
自分の存在価値を高める道具にされていたのかもしれない。
予測でしかないけれど、今の明里さんを見てれいればそう思えた。
「……帰るね」
「とっとと帰れ!」
もはや話は無駄で関係修復なんて出来ないと理解した私は、まとめていた荷物を持って明里さんのアパートから出た。
それは分かっているけれど、無視をしているのは明里さんだ。
何かを返してくれればと思いながら、再度口を開こうとした時、バンッ! と戸棚を閉める音と共に、こちらを睨みつける明里さんが見えた。
「ふざけてんの……?」
やっと明里さんが声を放ったかと思えば、憎悪に満ちた震える声。
「こっちは何年かけてやってると思ってるわけ!? ろくに稼げてもないような無名の分際で! 誰のおかげで歌を知って上げられてると思ってんの!? MIXまでしてやってんのにさ!」
言葉の端々に見られる、私への見下し。
明里さんには確かにお世話になっているし、色々教えてもらった。好意に甘えてMIXをしてもらったのも確かだ。でも……そこまで言われる程なのか。そして、ネットを巻き込んで傷つけられる事なのだろうか。
「それは確かに感謝……」
「大体、何の自慢なわけ? 曲提供してもらって私より上にいったとでも言いたかった? 偉そうに言ってんじゃないよ!」
私の言葉を聞く事なく、明里さんは更に言葉を続けた。
最早ただの被害妄想でしかない。
「私はただ……」
「良い子ちゃんぶって、人の手柄でのし上がって? 私は悪くないとか言いたいわけ? 調子のってんな! 生意気なんだよ!」
喜んでもらいたかっただけだ、という言葉は聞いてもらえる事もなく。
無視されて会話にならなかったと思えば、一方的に罵倒される。
恩を仇で返した。
常識を考えろ。
当たり前の事も出来ない。
社会にろくに出る事が出来なくて人間関係すらまともに築けない分際で。
甘ったれで親のすねかじり。
勉強しか誇れないくせに。
学校に行かせてもらってる癖に反抗する子ども。
最早、歌とは関係のない事まで引き合いに出されては、話し合いなんて無理だろうと悟った。
私という人となりを全て否定されてるだけなのだ。
自分自身の感情までもがスッと冷めるのが分かった。
……明里さんに話は通じない。
友達だと……ライバルだと思っていたのは私だけだと悟ってしまったのだ。
――この人は、こうなのだろう。
自分が面倒見ていた、つまり自分より下の相手が出来た。
一緒に楽しんでいるつもりだったけれど、もしかしたら自分より下の相手を作って優越感に浸っていたのかもしれない。
自分の存在価値を高める道具にされていたのかもしれない。
予測でしかないけれど、今の明里さんを見てれいればそう思えた。
「……帰るね」
「とっとと帰れ!」
もはや話は無駄で関係修復なんて出来ないと理解した私は、まとめていた荷物を持って明里さんのアパートから出た。
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