【完結】私が奏でる不協和音

かずきりり

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 そのまま床で眠ってしまった為か、夜明け前に目が覚めた。
 明里さんが帰ってきたような形跡はなくて、昨日のご飯もそのままだ。
 ボーッとしていた頭が働き出して現状を理解すれば、悲しみがまたもや込み上げる。でも、今泣いても変わらないのだと耐え、ご飯を片付ける。
 ……折角、用意したのに。
 何がいけなかったのだろう。

「……ごめんなさい……」

 言う相手も居ないのに口からついてでた言葉。
 悪かった所なんて分からないけれど……明里さんに許してもらえるのか。笑ってまた会えるのか。
 そう考えたけれど、明里さんが一晩帰ってこなかった事と、昨夜期待通りの反応が来なかった事で仲直り出来ないかもしれないという恐怖心が芽生える。

「……学校、行かなきゃ」

 何が起きても、変わらず朝日はのぼり、周囲は変わらない時間を迎える。
 鳥の鳴き声、朝の生活音、人々の声。会社や学校は今日もある。
 地球上の誰が悲しみにくれようが、誰が死のうが、変わらず続いていた自分の毎日。だけれど自分がこうなってしまえば、どうして日々は変わらず続くのだと、笑っている人達に疑問と憎しみを抱きたくなる。
 ……そんな心の狭い自分に自己嫌悪を抱きながら、私はいつもより大分早い時間に学校へと向かった。




「ともっち!? その顔どうしたの!?」
「ハンカチ濡らしてくるね」
「目元冷やした方が良いよ」

 やってきた東さん達は私を見て、次から次へと言葉をかけてきた。
 泣いたら瞼が腫れて、冷やしたら良い。なんて事も今まで知らなかった。
 私は皆のなすがまま言う通りに動いて、瞼を冷やし、どうしたのかと言う声に対し、正直に答えた。
 ……涙を耐えて。

「えー? 何それいきなり?」
「女って怖いからね」
「そういう遥も女じゃん!」

 本当にそうだ。というかここに居るのは全員女だ。
 愚痴なら聞くよ、吐き出せ! という東さんや紺野さんとは違い、羽柴さんは一人考えこんでいる。

「……羽柴さん?」
「絵里?」
「何か思い当たる事でもあるの?」

 私の声で羽柴さんの様子に気が付いたのか、東さんは首を傾げて名前を呼んだが、紺野さんは鋭い視線で疑問を投げかけた。

「いや……明音さん……? ずっと活動している人だよね?」
「知ってるの!?」
「知ってるってわけじゃないけど……」

 何て世間は狭いのかと思えば、そういうわけでもなかったらしい。

「もう何年も活動していて……そこまで知名度はないよね……」

 だから羽柴さんは知らない。
 そういう意味ではないのか。
 私は首を傾げて、羽柴さんの言葉を待った。
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