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「……でも、これ確かに本人からの……」
「智ちゃん、何か勘違いしてない?」
「……え?」
箸をおいて、冷たい目で私を見つめる明里さん。目の前に居る明里さんは、本当に明里さんなのかと困惑してしまう。
あんな目で見られた事もないし、こんな冷たい声で話しかけられた事もないのだから。
「自分のフォロワーの数、分かってる? 所詮無名でしょ。有名になったとか勘違いしてない?」
「そんなわけ……」
「歌始めたばっかの癖に、理想ばっか追い求めて。結局全てから逃げてるだけなのに?」
……そんな風に思っていたの?
確かに、その通りかもしれない。
地に足をつけていないのだから。でも……有名になっているとか思ってはいない。
きちんと自分の力量くらい理解している。
「ごちそうさま。くだらない話で食欲失せた」
「明里さん……」
私の声なんてまるで聞こえないかのように、明里さんはどこかへ出かけて行った。
……くだらない……なんて。
当然のように、おめでとうと言ってもらえると思っていた。
喜んでもらえると思っていた。
認めてもらえると望んでいた。
その全ては叶わず、むしろ毒を吐かれたようで。
「……ひゅっ」
息がしにくくなったかと思えば、過呼吸に襲われる。
涙が溢れるのは、苦しいからか。それとも悲しさからなのかも分からなくて……。
目の前にある茶碗を叩き割りたくなる衝動。そしてその破片で自分を傷つけたくなる衝動が……否、そうじゃない。
――希死念慮。
私は必死でそれに抗う。
嫌だ……嫌だ! 嫌だ!!
私は生きたい。私は歌いたい。
連Pさんの曲をどうしても歌いたいんだ!!
「うわぁあああんっ!!」
必死で自分の感情と戦い、何とか抑えこもうとすれば叫び声が口から出て来た。
同時に、涙も止めどなく溢れる。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣き叫んで。
希死念慮を洗い流すように。
自虐ではなく、悲しい辛いという思いをきちんと吐き出すように。
私は、ただひたすら泣き叫んだ。
――どうして!
泣いていれば、そんな思いが胸に広がる。
どうして、そんな事を言うの!
どうして、そんな冷たくなったの!
それが本音なの!?
どうして、私に優しくしたの!?
答えの出ない「どうして」が沢山沸き上がる。
「……どうして……」
嗚咽が収まった頃、言葉として出たけれど、それでも頭の中が整理される事はない。
明里さんの考えなど、明里さんでしか分からないのだ。他人の私がのぞけるわけでもない。
泣き疲れたのだろう私は、そのまま意識が朦朧とし、眠りの世界へと落ちて行った。
「智ちゃん、何か勘違いしてない?」
「……え?」
箸をおいて、冷たい目で私を見つめる明里さん。目の前に居る明里さんは、本当に明里さんなのかと困惑してしまう。
あんな目で見られた事もないし、こんな冷たい声で話しかけられた事もないのだから。
「自分のフォロワーの数、分かってる? 所詮無名でしょ。有名になったとか勘違いしてない?」
「そんなわけ……」
「歌始めたばっかの癖に、理想ばっか追い求めて。結局全てから逃げてるだけなのに?」
……そんな風に思っていたの?
確かに、その通りかもしれない。
地に足をつけていないのだから。でも……有名になっているとか思ってはいない。
きちんと自分の力量くらい理解している。
「ごちそうさま。くだらない話で食欲失せた」
「明里さん……」
私の声なんてまるで聞こえないかのように、明里さんはどこかへ出かけて行った。
……くだらない……なんて。
当然のように、おめでとうと言ってもらえると思っていた。
喜んでもらえると思っていた。
認めてもらえると望んでいた。
その全ては叶わず、むしろ毒を吐かれたようで。
「……ひゅっ」
息がしにくくなったかと思えば、過呼吸に襲われる。
涙が溢れるのは、苦しいからか。それとも悲しさからなのかも分からなくて……。
目の前にある茶碗を叩き割りたくなる衝動。そしてその破片で自分を傷つけたくなる衝動が……否、そうじゃない。
――希死念慮。
私は必死でそれに抗う。
嫌だ……嫌だ! 嫌だ!!
私は生きたい。私は歌いたい。
連Pさんの曲をどうしても歌いたいんだ!!
「うわぁあああんっ!!」
必死で自分の感情と戦い、何とか抑えこもうとすれば叫び声が口から出て来た。
同時に、涙も止めどなく溢れる。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣き叫んで。
希死念慮を洗い流すように。
自虐ではなく、悲しい辛いという思いをきちんと吐き出すように。
私は、ただひたすら泣き叫んだ。
――どうして!
泣いていれば、そんな思いが胸に広がる。
どうして、そんな事を言うの!
どうして、そんな冷たくなったの!
それが本音なの!?
どうして、私に優しくしたの!?
答えの出ない「どうして」が沢山沸き上がる。
「……どうして……」
嗚咽が収まった頃、言葉として出たけれど、それでも頭の中が整理される事はない。
明里さんの考えなど、明里さんでしか分からないのだ。他人の私がのぞけるわけでもない。
泣き疲れたのだろう私は、そのまま意識が朦朧とし、眠りの世界へと落ちて行った。
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