【完結】私が奏でる不協和音

かずきりり

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「絵里の名前を使っても、そんなにかー」
「いや、私もそんな有名なわけではないから」
「営業って難しいのね」

 明里さんのマイクを借りて録音したり、様々な曲を歌ってみた。
 だけれど、全てにおいて再生数は迷走しているし、登録者やフォロワーが伸びる事もない。
 東さん達も考えてはくれているようだけれど、所詮はまだ社会に出ていない高校生という事だろう。明確な答えなんて分かるわけもない。

「絵里の方法とは、また違うだろうしなー」
「言ってしまえば推し活や広告収入のようなものでしょう? 名前を売るといっても……」

 働いたら稼げる、一定の収入が入るというわけではないからこそ、どうして良いのか分からなくなる世界だ。

「推しになれたら強いのかもしれないけど……」
「その、推しになる方法が分からないよね……」

 推しがいない私には全く分からない世界でもある。
 だからこその方法がサッパリすぎるのだが。知らなさ過ぎて、わけがわからなくなりそうだ。

「いっそアニメ画像でも用意する……?」
「それ、方向間違ってない?」
「間違ってる……わけではない……かな」

 確かに配信をメインとしている人が歌ったりもしているけれど、私がメインにしたいのは歌なのだ。
 ゲーム実況や雑談なんて出来そうにない。出来るわけがない。
 色んな趣味があって、得意な事がある人には出来るかもしれないけれど、私には他に出来る事もないのだ。
 あーでもない、こーでもないと相談してくれる。けれど、どれをとっても更に迷走する気がする。

「……詰んだ……」

 絶望的な言葉が私の口から洩れる。
 もうここで自分の実力は限界を見たのか。
 でもまだ機材を揃えるとか、MIXを完全なプロに頼むとか。更に言うならボイストレーニングに通うとかいう手段もある。ただ、その全てにお金という先行投資が必要になるわけで……今の私は持っていないものだ。

「就職してから……とか?」
「仕事していると学生の時みたいに時間がなくなるとは聞くけど……」
「全部、そうなってからじゃないと分からないやつだよね~」

 そうだ。
 結局、先の事なんて誰にも分からない。

「今出来る事と言えば、コツコツ歌をあげていく事と、自分なりのボイストレーニングじゃない?」

 結局これしかないと答えを出した時、私のスマホが震えて何かを受信した事を伝えた。
 画面を見れば、SNSにDMが届いたようなのだが、見知らぬ名前だった。
 と言っても、私が絡んでいるような相手なんて居ないのだけれど……。その名前を見た時、私は今この瞬間全てが夢なのではないかと目を疑った。
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