【完結】私が奏でる不協和音

かずきりり

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「高収入狙いなら、そういう人が居る所に居ないとね」

 こういうのを、あざといとでも言うのだろうか。でも紺野さんには、そんな言葉が似合わない。
 自分が子どもの頃にして欲しかった事を、自分の子どもにしたい。けど、そこは子どもの意思に合わせたいと笑って言うその姿は、ただ夢を追い求めるのに必要なものを掴み取ろうとしているだけだと思えるのだ。
 ……そして、きちんと自分も、その為に勉強をしている。

「絵里はイラストだもんね~?」
「まぁ……今までそうやってきてたしね」
「え!?」

 皆には驚かされてばかりだ。

「でも未成年じゃ……」

 むしろ羽柴さんは自分に近い位置だ。どうやって収入を得ていたのか、とても気になる。

「ん~……同人とか。あとはネットで絵を売ったり……でもお小遣い程度だよ? うちは母しか居ないけど病弱だから、そんなにお金があるわけじゃないしね。オシャレだって絵の勉強がてらって所もあるし」

 ネットで……絵を。
 詳しく話を聞いてみれば、やはり羽柴さんの場合は親の承諾が必要なものはきちんと承諾を得ているという。その違いは大きいだろう。

「でも絵で食べていけないと思って勉強もしてるよ」

 ズキリと胸が痛む。
 大幅に落ちた成績。あれだけ必死にやらないと、いくら塾に行っていたとしても私は赤点だったのだ。
 落ち込んだ私に三人は一緒に悩んでくれるようで、色々考えを口に出してくれたけれど、そのどれもが答えにはならない。

「バイトがないなら、勉強をして……」
「でも自立とか機材購入までの道のり遠くなるよ?」
「どうせバイト出来ないし、歌で名前売るくらいしか無理じゃない?」
「割のいいバイトないかなー……」

 私に出来ると思わないけど。そんな要領なんてよくないし。
 溜息を吐きながら何気なく呟いた一言だったのだけれど、三人は一斉に私へと厳しい視線を向けた。

「「「駄目!」」」
「え?」

 妙な威圧というか剣幕で、私は若干引いてしまった。
 何が駄目なのか……割の良いバイトは私にどうせ出来ないという意味なのか。首を傾げていれば、皆は呆れた顔をした。

「ともっちみたいなのが騙されるんだよ」
「いわゆる……パパ活みたいな……」
「割の良いバイト探していても、マトモなのはないって思った方が良いよ」

 そっち!?
 騙される!?
 全くもって自分とは縁のない単語が出て来た事で、こちらが驚き慌てふためいた。

「私には無理!」
「無理で良い!」

 そんな世界に足を踏み入れるなんて、確実に怖さしかない。
 地味な子ほど騙されるからと、東さん達は何かあったら絶対に相談しろと念押ししてくれた。
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