【完結】私が奏でる不協和音

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「えっ！？　家出！？」
「美紀、声が大きい」

　学校へ行って、世間話のように東さん達に言えば、大分驚かれた。

「いきなりバイト辞めたの、そういう理由だったんだ……」
「話聞いてくれないとか、会話する意味ないよね～」
「というか、子どもとは言え、対人間である事を忘れられたくはないね」

　同じ学校、同じ歳の人が私と同じ意見を言えば、私だけじゃなく一般的な意見なのだと……誰もが同じなのだと思えた。心に少しだけ安心感が広がる。

「てか、親だけじゃなく対人関係って全部そうじゃね？」
「まぁ、そうだよね」
「会話が合うか合わないかで友達決めるもんね」
「……え？」

　思わず声が出れば、三人共が首を傾げてこちらを見た。

「え？」
「そうじゃない？」
「ノリも大事だけどねー！」

　会話が重要……？

「カーストで決めているのかと……」

　ポロリと漏れ出た本音に三人は呆気に取られた後、笑い出した。

「カーストなんて誰かが勝手に言ってるだけっしょ！」
「人を気にして何になるの」

　まさかの返答に私の方が呆けてしまう。
　派手で目立ち、発言力があって周囲にも影響を与えるカースト上位。それに比べて私は……地味で誰も相手になんてしてくれない。
　顔を下げて言う。今や毎日のように会話するけれど、周囲の視線が痛いのは相変わらずなのだ。
　だからと言って、私から逃げる事は勿論、嫌がるなんて事もなく受け入れているだけなのだ。流されているとも言える。
　……でも、それは嫌でないのだ。むしろ新しい意見を知り視野が広がる事も含めて楽しいと思えるのだ。

「そんな不安になんてなるもんー？」
「美紀は本当に考えなしだからね」

　自分を持っている。芯があるというのは、こんなにカッコいいのか。
　周囲が勝手に評価して、勝手に言って……でもそれは自分に関係ないと言い切る。ただ楽しんでいるだけなのだ。

「考えなしとは失礼な！！　私は美容師になって将来は独立したいから、今からこうやって色々試してるだけだし！　人間関係とか上下関係とか面倒だしさー。独立した方が自分らしく生きられるっしょー？」

　……東さんが意外と将来について考えていた事に驚いて、私は目を見開くと、それに気が付いた紺野さんや羽柴さんが吹き出した。

「意外と美紀は考えてるんだよ。私は大企業に勤めて同じ大企業の男と結婚したいな。……うちは親が仮面夫婦だからね。家庭に入って守りたいし、子どもとの時間が欲しいんだ」

　だから、しっかり勉強はしてると言う紺野さん。
　今の環境を反面教師に、しっかり将来を見据えているのか。