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「やった……」
学校と塾。合間に歌。
そしてバイトの面接を繰り返していれば、飲食店の厨房勤務の採用通知が届いた。
料理の経験はないのだけれど……と不安は残るけど、面接では簡単な事からと言っていたし、大丈夫だろう。
「えっと……時給は……」
塾がない放課後、週に2回程、4時間程度入れるとは伝えた。その時間を全てシフトに入れてもらえるとしたら3万は稼げるだろう。
パソコンまでの道のりは遠いけれど、それでも着実に進める。
……帰りが遅い! とか怒られる? 誤魔化す?
不安要素が全く拭えていない中で決まった採用に、心臓が煽られる。
「片桐さん、バイトすんのー?」
呼吸を整えていれば、いきなり声をかけられ、驚いて顔を上げる。
そこに居たのは金髪のロングヘアで、インナーカラーにピンクを入れており、ピアスやネイルを付けてスカート丈も短いオシャレな女の子。東美紀だ。
進学校とはいえ、校風は自由。自己責任の元に動けといった所があり、校則も緩いからこういった子も居る。
だからこそ、この学校にもカーストのようなものがあり、東美紀はそのカースト上位の生徒だ。
「……」
バイトを知られたくなかったのに、どうして。
何て答えようかと考え言葉が出てこない私の様子を気にもとめず、東さんは机の上に置いてあった私のメモを指さした。
「月3万くらい稼ぐ予定ー?」
ただの計算式が書いてあるようなメモ……だけれど、それからこんな推理が出てくるものなのか。
時給×時間×日数×4週という計算は、確かに見る人が見ればわかりやすいのかもしれないけれど。
「勉強は大丈夫な感じ?」
ズキンッ!
心が痛む。
ついて欲しくない所を付かれて、私は唇を噛みしめた。
不安が更に増長して、今にも暴れ出したいという思いと、衝動的に自傷行為へと走りたくなる気持ちを必死に抑える。
「美紀、ズカズカと入り込みすぎ」
「えー?」
天の助けとも取れる声の主は、東さんと一緒に居る紺野遥だ。
ショコラブラウンに染めたショートヘアで、ブレスレット程度の飾りしかないけれど、東さんと居る事で紺野さんもカースト上位だ。
「自分の成績を心配したら?」
「それなっ!」
同じく、いつも東さんと一緒に居るカースト上位の羽柴絵里も話題を変えてくれた。
この子は黒髪で内巻のセミロングなのだけれど、ピアスとネイルはしている。
三人は笑いながら私の席から離れていく。
楽しそうに、充実しているだろうと思える三人。私とは住む世界が全く違うとも思えてしまう程で……私は、震える身体を落ち着かせる為にも、シャーペンを自分の腕に突き刺した。
学校と塾。合間に歌。
そしてバイトの面接を繰り返していれば、飲食店の厨房勤務の採用通知が届いた。
料理の経験はないのだけれど……と不安は残るけど、面接では簡単な事からと言っていたし、大丈夫だろう。
「えっと……時給は……」
塾がない放課後、週に2回程、4時間程度入れるとは伝えた。その時間を全てシフトに入れてもらえるとしたら3万は稼げるだろう。
パソコンまでの道のりは遠いけれど、それでも着実に進める。
……帰りが遅い! とか怒られる? 誤魔化す?
不安要素が全く拭えていない中で決まった採用に、心臓が煽られる。
「片桐さん、バイトすんのー?」
呼吸を整えていれば、いきなり声をかけられ、驚いて顔を上げる。
そこに居たのは金髪のロングヘアで、インナーカラーにピンクを入れており、ピアスやネイルを付けてスカート丈も短いオシャレな女の子。東美紀だ。
進学校とはいえ、校風は自由。自己責任の元に動けといった所があり、校則も緩いからこういった子も居る。
だからこそ、この学校にもカーストのようなものがあり、東美紀はそのカースト上位の生徒だ。
「……」
バイトを知られたくなかったのに、どうして。
何て答えようかと考え言葉が出てこない私の様子を気にもとめず、東さんは机の上に置いてあった私のメモを指さした。
「月3万くらい稼ぐ予定ー?」
ただの計算式が書いてあるようなメモ……だけれど、それからこんな推理が出てくるものなのか。
時給×時間×日数×4週という計算は、確かに見る人が見ればわかりやすいのかもしれないけれど。
「勉強は大丈夫な感じ?」
ズキンッ!
心が痛む。
ついて欲しくない所を付かれて、私は唇を噛みしめた。
不安が更に増長して、今にも暴れ出したいという思いと、衝動的に自傷行為へと走りたくなる気持ちを必死に抑える。
「美紀、ズカズカと入り込みすぎ」
「えー?」
天の助けとも取れる声の主は、東さんと一緒に居る紺野遥だ。
ショコラブラウンに染めたショートヘアで、ブレスレット程度の飾りしかないけれど、東さんと居る事で紺野さんもカースト上位だ。
「自分の成績を心配したら?」
「それなっ!」
同じく、いつも東さんと一緒に居るカースト上位の羽柴絵里も話題を変えてくれた。
この子は黒髪で内巻のセミロングなのだけれど、ピアスとネイルはしている。
三人は笑いながら私の席から離れていく。
楽しそうに、充実しているだろうと思える三人。私とは住む世界が全く違うとも思えてしまう程で……私は、震える身体を落ち着かせる為にも、シャーペンを自分の腕に突き刺した。
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