【完結】私が奏でる不協和音

かずきりり

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 スマホでの録音方法を教えてもらって、お互いコラボして歌う曲を決めた数日後。
 私は時間を見つけて、母の居ない合間や塾の帰りに住宅街から離れた公園などで歌い、納得したものを明里さんに送れば、Mixしたものとして返って来た。

「全然違う……」

 Mix作業というのは、これほどまでに違うのかと驚いた。
 自分の声が強く、通る。更に曲に合わせてエフェクトまで変えてあるのだ。
 しかし、これは所詮スマホで録音されたもの。
 明里さんの歌ってみた配信の声は更に違って、歌声がもっと伸びているというか綺麗なのだ。

「マイク……か」

 呼吸のノイズ等が入らないようにとポップカードを付けていると言っていた。
 元々の歌声も大事だけれど、歌声に化粧を施すように、自分の声をよく聞かせる。姿勢やしゃくり、ビブラードといったものだけでは、曲と歌声のバランスなんて取れないのか。
 奥が深い。
 こんな風に自分の歌声を飾ってみたい。
 心の奥から沸き起こる欲求。私はマイクやパソコン、オーディオインターフェースといったものを検索してみたのだけれど……。

「高っ……」

 あまりの金額に頭が痛くなる。
 一式揃えるのも大変だし、そこから自立を考えれば……なかなかに痛手だ。
 そういえば自分でMixするのであればDAWといったソフトも必要と言っていたし、明里さんも何か色々と購入していると言っていた事を思い出した。
 アップデート、プラグイン……初めて触れる横文字ばかりで、きちんとした理解まで追い付いていないけれど、継続するにはお金が必要だし大変な作業だという事は分かった。

 ――凄い。

 明里さんだけでなく、自らMixして配信している人も。
 それを全て乗り越えてきているのだ。

「あ、委託とかも言っていたっけ……いくらなんだろう」

 私は明里さんに頼んでいるけれど、そうやって外部に頼む歌い手も居ると言っていた。
 バイトもしていない友達からお金を取るわけにはいかないし、楽しんでやっているからと断られたけれど、相場はどれくらいなのだろうと調べる。
 値段の差はあるものの、ある一定の値段が多いと分かった。けれど……今はそれを支払う事も難しい。

「まずはパソコンからかなぁ……お金……」

 録音環境がある事に羨ましさを感じながら、私は動画配信サイトへアップする為に登録をして、言われた方法でMVを用意し、不安な気持ちがあるものの自分の歌をあげた。

「……」

 ちょっと怖いという気持ちもあり、通知をオフにした私は、そのままバイト探しへと勤しんだのだ。
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